05
「えっ……」
ハル……じゃ、ないよね? じゃあ、一体誰の……?
キョロキョロと辺りを見回す私とは反対に、ハルは落ち着いた様子で視線を下に向けた。
「ごめん、起こしちゃったね。
紫闇も何か飲む? ずっとボールにいて喉乾いたでしょ」
『……アイスコーヒー。砂糖は入れるなよ』
その声と同時に、ハルと白恵の間に1匹のポケモンが姿を表す。
黒くしなやかな体に、大きな紫色のたてがみが特徴的な子だった。
綺麗でカッコイイ……こんなポケモン見たことない。
ふと、彼? の金色の瞳と視線がぶつかった。
『誰だ、コイツらは』
「トゲピーの白恵と、キルリアの緋翠。そのトレーナーのユイだって」
『そうかよ。まぁ、俺には関係無い。
飲み終わったらさっさとボールに戻るからな』
そう言ってテラスのフェンスにもたれるようにして座ったその子を、ポケモン図鑑でスキャンしてみる。
図鑑の音声が、ゾロアークと彼の種族名を読んだ。
するとその音声に反応したのか、ゾロアークが私を睨みつける。
『おい。勝手に図鑑で読み取るな、人間』
「ご、ごめん。何てポケモンなのか気になって……」
確かにちょっと不躾だったな。反省しないと。
でも、あのゾロアークの目……初めて会った時の晶を思い出した。もしかして、彼も人間嫌いとか?
改めてポケモン図鑑を見る。そこに映っているゾロアークの姿は、目の前の彼とは違っていた。
ハルが"紫闇"と呼んでいる彼は紫のたてがみに金色の瞳だけど、図鑑のゾロアークは深紅のたてがみにスカイブルーの瞳だ。
ということは、紫闇君は色違いの個体なのか……。
人間不信なところは晶と、色違いの個体ってところは璃珀と同じだ。
うん、ますますみんなに会わせたくなってきた!
「……さっきから何ニヤニヤしてるの」
「えっ!? そんなに顔緩んでたかな?
……あのさ、ハル。良かったら私のポケモンたちに会ってみない?」
「お前のポケモンに?」
微かに見開かれたその目に、少しの好奇心が写っているように見えた。
「私たち、シンオウ地方から旅行で来てるんだ。
イッシュでは見られない子ばかりだし、ハルをみんなに会わせてみたいな」
「イッシュでは見られない、か……。まぁ、暇つぶしとして付き合ってあげる」
「やったぁ! ありがとう、ハル!」
「別にお前のためじゃない。
あくまで他の地方のポケモンに興味があるだけなんだから、勘違いしないでよ」
今日はもう約束の時間が近付いているので、ひとまず明日ということになった。
ハルたちとはカフェで別れ、ホテルへと戻ってくる。
碧雅たちの帰りを待っている間、私はソワソワとしながら楽しみな気持ちを隠しきれないでいた。
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