03

サンヨウシティの街並みを3人で歩く。

一通り見たい場所を巡ったところで、私たちは1件のカフェへ入ってお茶にすることにした。

緋翠の入れてくれる紅茶も美味しいけど、たまにはお店での紅茶も良いよね。

"後学のために"って彼も何か張り切ってるし、カフェに入って正解だったのかも。

ティーカップの乗ったトレーを持って、空いている席が無いか探す。

すると見覚えのある姿を見つけた。

(さっき見た白い髪の子だ)

静かに紅茶を嗜んでいるその姿は、まるで絵画を見ているみたいに綺麗だった。

その隣では緑の髪の女の子が、花の咲くような笑顔を浮かべながらパンケーキを頬張っている。

更に1口分切り分けたそれを、白い髪の女の子に差し出して。

パンケーキを食べて微かに微笑んだのを見て、緑の髪の女の子が嬉しそうに笑う。

(わぁ〜……何あの空間、すごく癒される!
混ざりたいけど、お邪魔かな……?)

声を掛けようか悩んでいると、ふと白い髪の女の子と目が合う。

その子が視界に私たちを捉えた瞬間、空のように青い瞳がキッと細められた。

「……何。人のことジロジロ見ないでくれる」

「わっ、ごめんなさい! 見入っちゃってたのは謝ります!
あなたたちの様子が癒されるもので、つい……」

私の返事に"意味が分からない"と言わんばかりに細められた瞳に写っていたのは、"警戒"の色。

さっきまで緑の髪の女の子に向けていた表情はすっかり鳴りを潜めていた。

「そう畏まることもあるまいよ、わらわは気にしておらぬぞ。
そんなことより、そなたらも座ってはどうじゃ?」

「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて」

白い髪の女の子が"ちょっと翠姫……"と呟く。

それに対して緑の髪の女の子が"良いではないか。女子会とやらをしてみたいぞ!"と笑顔で答える。あの緑の子、翠姫ちゃんって言うんだ。

「わぁ。おねえちゃんのかみ、まっしろ。
ぼくといっしょだねぇ」

「えっ、ちょっと白恵!?」

白恵がトコトコと白い髪の女の子に近付いていく。

私はその様子をハラハラと見ていることしかできなかった。

「……誰」

「トゲピーの白恵だよ」

「トゲピー……? まさか、ポケモンなの?」

「うん、そうだよ」

女の子の白い手が、白恵の頭へ向けられた。

その手は静かに下ろされ、白恵の頭を優しく撫でる。

警戒するように吊り上がっていた目付きも、優しいものに変わっていた。

「そう……君はポケモンなんだね。じゃあ、あの2人も?」

「ユイちゃん、すいちゃん、ごあいさつだよ」

「初めまして、キルリアの緋翠と言います。
こちらは我々のマスター・ユイ様です」

「は、初めまして……」

女の子は白恵と緋翠の話を聞きながら、何かの機械を取り出す。

音声の内容を聞くとポケモン図鑑のようだ。イッシュ地方の図鑑ってスライド式なのか。

「ふむ、自己紹介を受けて名乗らぬのは失礼よな。
わらわはツタージャの翠姫。隣におるのがわらわの自慢のトレーナー・ハルじゃ」

「か……可愛いー! 和服の美少女だ!」

初めて訪れた地方でこんな可愛い子たちに会えるなんて、今日は何てツイてるんだろう!

翠姫ちゃんは可愛いと言われたことが嬉しかったのか、フフンと胸を張った。あぁ、その仕草も可愛い!

「うむ、うむ! もっと褒めて良いぞ!
ユイ、緋翠、白恵と言ったな。女子同士、仲良くしようではないか」

大きなため息をつくハルちゃん? の隣で、サイドテールを揺らしながら笑う翠姫ちゃん。

仲良くするのはもちろんなんだけど……。

「すーちゃん、ぼくおんなのこじゃないよ?」

「なっ……!」

「申し訳ありませんが、私も女性では……」

「ぬっ……!?」

「その……ごめんね、翠姫ちゃん。白恵も緋翠も、男の子なんだ」

「な、な、な……!」

"何じゃとーーー!?"という翠姫ちゃんの絶叫が響いた。


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