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「というわけで……。来ました、サンヨウシティ!」

「わぁ〜。どんどん、ぱふぱふ〜」

「何、その棒読み」



空港で飛行機を降り、イッシュ地方の大地を踏みしめる。

サンヨウシティはコトブキシティよりも大きそうな街で、1日で観光するのは難しそうな印象を受けた。

……うん、1泊2日にして正解だったね!

この街のホテルにチェックインして、部屋に荷物を置く。

イッシュ地方のポケモンセンターでは、ラッキーじゃなくてタブンネってポケモンがジョーイさんのお手伝いをしてるんだって。見てみたいなぁ。

「で? そのサンヨウジムというのはどこにある、ちんちくりん?
僕の方から直々に出向いてやろう」

「いや、ポケモンジムってチャレンジャーから出向くもんじゃね?」

「心配しなくても、サンヨウジムには必然的に行くことになるよ。
そのための無料チケットなんだろう、ご主人?」

「それに、飛行機での長旅でマスターもお疲れです。
今日は観光に専念して、ジム見学は明日になってからでも遅くはないでしょう」

「そこまで疲れてる訳じゃないけど……そうだね、サンヨウジムには明日行ってみようか。
今日は自由に観光して、約束の時間になったらここに戻ってくるってことで」

部屋に備え付けられたテーブルに、シンオウで予め買っておいた旅行雑誌を開く。

みんなが思い思いに"どこに行こうか"とか、"何をしようか"という話題に花を咲かせた。

すると璃珀が"ちょっと良いかな"と口を開く。

「どうしたの、璃珀?」

「観光する時に少し気を付けて欲しいことがあってね。
ご主人のいないところでは擬人化を解かないようにしてくれるかな?」

「どういうことだ、ロン毛。擬人化を解かなくてはバトルもできないだろう」

「イッシュは独自の生態系が確立されていて、他の地方のポケモンはとても珍しいんだ。
もし俺たちが原型の状態でいるのをポケモンハンターとかに見られでもしたら、最悪捕まって戻れなくなるかもしれないからね」

璃珀の言葉をそのまま想像してしまって、 思わず背筋に寒気が走る。

私たちにとってイッシュのポケモンが珍しいように、この地方の人たちにとっては碧雅たちも珍しいポケモンだもんね。

ティナちゃんは"自分が野生のポケモンだから"なんて言ってたけど、もしかしたらこのこともあって行けなかったのかも。

晶も璃珀の話に納得したのか、少し不服そうではあるけど"分かった"と頷いている。

他のみんなも私のいないところでは絶対に擬人化を解かないと約束してくれた。

「……じゃ、今日はこのまま別行動にしようか。
せっかく来たんだし、楽しんでおいでよ」

私と一緒に行動する緋翠と白恵以外のメンバーと別れ、それぞれがサンヨウシティの観光に向かう。

ポケモンセンターの前を通りかかった時、私と同じくらいの年頃の女の子とすれ違った。

(わぁ、綺麗な子。お人形さんみたい)

真っ白な髪に青い瞳のその子は私の隣を通り過ぎると、無言のままスタスタと歩いて行ってしまった。

「あの方がどうかされましたか、マスター?」

「うぅん、何でもないよ。綺麗な子だなーって思っただけ」

「ユイちゃん、あのこにあいたい?」

「え? んー……そうだね。
また会える機会があるなら、会ってみたいかな」

私がそう答えると白恵のオッドアイがジーッと見つめてくる。

"またあえるよ"と小さな口が呟いた。


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