01

「んー、今日も良い天気だなぁ!」

「はい。しばらくは晴天が続くようですよ、マスター」

シンオウ・ノモセシティ−−。

ポケモンセンターで各々が自由な時間を過ごす中、紅茶を飲みながら思い切り伸びをした。

お茶請けは紅眞の作ってくれたスイーツ。甘さもちょうど良くて、とても美味しい。

「青い空に白い雲……絶好のお散歩日和って感じ。お弁当持ってピクニックも良いかも!」

「それは楽しそうですね。ティータイムの後で皆を誘いましょうか」

「もーもーのみながら、おさんぽー」

「飲みながらは危ないからポケモンセンターに戻ってからにしようね」

「うん、わかったー」

白恵の頭を撫でながらそう言うと、彼は気持ち良さそうに目を細めた。髪の毛フワフワ。

紅茶を飲み終えたところで、誰かが部屋の扉をノックする音が聞こえた。

『ユイさん、いますか?』

今のは……ラッキーの声だ。

も、もしかしてうちの子に何かトラブルとか!?

「は、はい! 今行きます!」

ドタバタと慌ててドアノブを捻る。廊下に立っていたのはラッキーと……。



「こんにちは、ユイ」

「えっ。ティ、ティナちゃん!?」



ニッコリと綺麗に笑う私の友達・ティナちゃんだった。

どうやら私を訪ねてきたらしくて、ラッキーはここまで案内してくれたみたい。

ひとまずトラブル案件では無いことに胸を撫で下ろし、ティナちゃんを部屋へ招き入れる。

緋翠に頼んで彼女の紅茶を用意してもらった。

「ところで、今日はどうしたの?」

「おねえちゃん、いらっしゃい」

「こんにちは、坊や。
……突然押し掛けてごめんなさい。あなたにこれを渡そうと思って」

そう言ってティナちゃんが差し出したのは2枚のチケット。

よく見るとそれは、レストランの無料お食事券のようだった。

「無料チケット、って……こんな良い物、本当に貰っちゃって良いの!?」

「良いのよ。あたしが持っていても仕方ないし、あなたは……あたしにとって初めての友達なんだから」

「ティナちゃん……」

どこか恥ずかしそうに、照れくさそうに笑いながらそう言うティナちゃんの言葉にジーンとしてしまう。

「それに野生のポケモンが飛行機になんて乗れないしね。
あなたさえ良ければ、遠慮なく使ってちょうだい」

「……"飛行機"?
え、これってシンオウにあるレストランなんじゃないの?」

「チケットのイラストをよく見て。
シンオウで見たことの無いポケモンたちでしょう?」

ティナちゃんに言われて、私はもう1度チケットをマジマジと見た。

確かにチケットにはそれぞれ緑・赤・水色をした子ザルのようなポケモンが描かれている。

彼女の言う通り、どの子もシンオウでは見たことが無かった。

裏面を見ると右下の方に"サンヨウジム・レストラン"と書かれている。

「サンヨウ、ジム……?」

「イッシュ地方の東側にある街だそうよ。
あたしも詳しくは知らないけれど、そこのジムリーダーがレストランも経営してるって聞いたわ」

ジムとレストランを兼業してるってことだよね。

晶が食い付きそうだな……"ジム"ってワードに。

でも初めて聞く地方の名前に、ドキドキとワクワクが止まらないのも事実だった。

「ありがとう、ティナちゃん。お土産いっぱい買ってくるよ!」

「気持ちだけで……って言うのは野暮かしらね。楽しみにしているわ」

優雅に紅茶を飲み干したティナちゃんは"ごちそうさま"と言って、リッシ湖へと戻って行った。

いつ見ても絵になるよねぇ、あの子。さすが美少女。

夕食の時間になって部屋に戻って来たみんなに、ティナちゃんから貰ったチケットのことを話す。

予想通り晶がジムリーダーの話に食い付き、紅眞も彼らが経営するというレストランに興味深々みたいだった。

ネットで飛行機の予約を済ませて、未踏の地方へ思いを馳せた。


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