05
今回の審判は孝炎さんが務めてくれることになり、晶の入ったモンスターボールを手に取る。
「晶、お願い!」
「頼むぞ、烈!」
バトルフィールドに晶と烈さんが出てきて、お互いに対戦相手を見据える。
前に紅眞がバトルした時もそうだったけど、烈さんのその立ち姿はとても堂々としている。
こうして相対しているだけで、緊張で肩に力が入ってしまうのだ。
『ユイ、そこまで肩肘張らなくても良いだろ。
公式戦でもなし、適度に肩の力抜いとけ』
「わ、分かってますけど……。
前回のバトルで烈さんの強さが身に染みてるというか……!」
『前回って、メガシンカ無しの時のか?
あれでビビってたら今回のバトル持たねぇぞ』
うぅっ、おっしゃる通りです……。
トレーナーの私がしっかりしないといけないのに!
『おい、対戦相手に気を遣われてどうする。
緊張のあまり無様な姿を晒すのは許さないからな。……全力でやるぞ、主』
晶の黒い瞳が私を見ている。
何だかんだ言いながらも信を置いてくれているのが分かる。
それに応えるのは他でもない、彼のトレーナーである私だ。
「……うん。私たちの全てをぶつけるよ、晶!」
「烈も晶も頑張って!」
悠冬君の声援も受け取って、私はもう1度アレックスさんと烈さんを見据える。
孝炎さんの試合開始のコールと共に、舞台の幕が上がった。
「晶、ハイパーボイス!」
「火炎放射だ!」
耳をつんざく程の音波と、灼熱の炎がぶつかって上空で爆発を起こす。
続けてフェザーダンスで彼の攻撃を下げ、竜の舞でこちらの能力を上げる作戦に出た。
「ドラゴンクロー!」
「こちらもドラゴンクロー!」
晶と烈さんのドラゴンクローが激しくぶつかる。
力の差は互角……と言いたいところだけど、
相手はカロスのジムを全制覇したベテラントレーナーとその相棒。
経験と実力は私より……というかフユカよりも格段に上なのだ。
そんな相手を前に、晶は目に闘志を宿したままよく戦ってくれている。
『クッ……! なるほど、面白い……!』
『へぇ。紅眞といいお前といい、良い目をするじゃねぇか。
先輩としてちっとばかし揉んでやるよ。行くぜ、アレックス!』
「あぁ、分かった! キーストーンよ、輝け!」
アレックスさんの掛け声に呼応するかのように、彼の持つキーストーンと烈さんの持つメガストーンが眩しいくらいの光を放つ。
初めて見た晶はその凄まじい輝きに目を細めていた。
「この輝きこそが、我らの絆の証! 烈、メガシンカ!」
虹色の光が一際大きく弾ける。
視線の先には黒い体に、口の端から溢れ出る青い炎……メガシンカした烈さんが立っていた。
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