02



「ぶえっくし!」

「わっ!? びっくりしたぁ……」



カロス地方・プラターヌ研究所−−。

食事の準備中、配膳を手伝っていた私は突然響いた烈のくしゃみで肩が跳ねた。

「あー、悪い。料理には掛かってねぇから安心しろ」

「うん、それは見てたから分かるけど……。大丈夫?」

「おぅ、誰か噂でもしてんだろうよ。気にすんな」

手渡された料理をテーブルに持って行き、全員が席に着いていることを確認する。

「全員揃ったかな? じゃあ食べようか」

アレックスさんの合図で、みんなが手を合わせる。

"いただきます"と言おうとした時、テレビ電話の着信音が鳴った。

「あら? 誰かしら、こんな時間に」

「私が出てくるよ。みんなは先に食べてて」

相手を待たせるのも悪いと思いながら、小走りでテレビ電話へと向かう。

応答ボタンを押して画面に映り込んだのは、何と晶君だった。

「晶君!? どうしたの、珍しいね?」

"ん? 何だ、平民女か。
だが丁度良い、お前に聞きたいことがある"

「な、何?」

本当に珍しいこともあったものだと心の中で思う。

人間嫌いの晶君が自分でここに電話して来たこともそうだけど、私に聞きたいことがあるなんて。

少しずつでも心を開いてくれてるのかな、と嬉しくもなった。

"お前の知り合いにリザードンがいるのだろう?
今度、そいつと僕を戦わせろ"

「えっ? リザードン?」

知り合いのリザードンって、たぶん烈のことだよね?

確か晶君とは、まだ面識が無かったように思うけど……ユイから聞いたのかな?

"あれ、何してるの晶?"

電話の向こうから聞こえてきた、晶君のものとは別の声。

振り返った晶君の奥に見えたのは、ユイの姿だった。

"ちんちくりんか。
見れば分かるだろう、平民女にリザードンと戦う約束を取り付けているところだ"

"平民女、って……。えっ、フユカと電話してるの!?"

慌てた様子で画面を覗き込んできたユイの青い瞳と目が合う。

"久しぶり"と挨拶すると、ユイも同じように返してくれた。

"ご、ゴメンねフユカ! 晶が失礼なこと言っちゃったりしてない?"

「大丈夫だよ。烈とバトルさせてくれって言われただけだし」

ちょっと驚いたけどと言えば、ユイは大きくため息をついて"やっぱり……"と頭を抱えた。

"晶、紅眞がメガシンカした白刃君とバトルしたって聞いて対抗心燃やしちゃってて……。
で、私が烈さんのこと口走っちゃったから……"

「あー、そういうことだったんだね。
烈もバトルは嫌いじゃないし、受けてくれると思うよ。
しばらくはフィールドワークの予定も無いみたいだし」

"ほぅ……それは僥倖だな。
平民女、そのリザードンに"首を洗って待っていろ"と伝えておけ"

"何でそんなケンカ腰なの。
ゴメンねフユカ、晶のわがままに付き合わせちゃって"

「アハハ。私もユイたちに会えるのは大歓迎だし、いつでもおいでよ。
バトルフィールドは、レオンハルト邸に借りれるように話しておくから」

"ホントありがとう。シンオウのお土産、いっぱい持って行くから!"

詳しい日時が決まったら連絡すると約束してくれ、画面が真っ暗になる。

(さっき烈がくしゃみしたの、もしかしてユイたちが烈の話をしてたから?
……なーんてね)

レオンハルト邸に電話する前に、まずはご飯食べないとね。

食堂へ戻る私の足取りは軽く、顔には自然と笑みが浮かんでいた。



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