07

フユカが提案してきたのはポケモンバトルだった。

……といってもただのポケモンバトルじゃなくて、私はフユカの、フユカは私の手持ちポケモンを使うというものだ。

確かにこういう時くらい(いや、滅多に無いんだけど)しかできそうにないやり方ではある。

それに何より、自分の手持ちの子を相手にバトルするのも楽しそうだと思う自分もいた。

ルールは3vs3で、先に2勝した方が勝ちというもの。

フユカの手持ちの子たちの中から3体選び、バトルフィールドに立つ。

彼女の方も3体選び終わったようで、私とほぼ同時にポジションへ付いた。

「……緑炎は選ばなかったんだね」

「うん。いくら見た目はフユカでも、私が緑炎さんを選ぶのは何か違うかなって。
そう言うフユカだって、碧雅を選んだわけじゃないでしょ?」

「アハハ、ご名答。……よし、じゃあ始めようか!」

審判は緑炎さんが務めてくれている。

フユカがうちの子たちとどんなバトルをするのか、ちょっとワクワクするな。



「初手はこの子で行くよ。頑張ろうね、雅ちゃん!」

『僭越ながら、今この時だけはユイに力添えいたしますわ』

こっちの先鋒は雅ちゃん。1度で良いから女の子のポケモンと組んでみたかったんだよね!

あー、眼福……。長年の夢が叶った気分!

「相手は雅かぁ。それならこっちは……!
紅眞君、Saisir la victoir!」

『よっしゃー! 負けねぇぞ!』

やっぱり初手は紅眞で来たかぁ。

紅眞はフユカの手持ちの子のほとんどに対して弱点を突ける。

いつもはそれが優位に働いているけど、今回はその逆。十分に気を付けなきゃ。

先攻後攻はジャンケンで決め、私が先攻になった。

『相手は雅かぁ。サイコキネシスにさえ気を付ければいけそうだな!』

「いや……そうとも限らないよ、紅眞君」

何か心当たりでもあるような表情で、フユカが雅ちゃんを見つめる。

……炎タイプ相手に有利な技を覚えたとか?

「とりあえず、遠慮なく行かせてもらうね!
雅ちゃん、サイコキネシス! 紅眞を投げ飛ばして!」

『はい!』

『意外と容赦無いな、ユイ!?』

まずはサイコキネシスで紅眞の動きを封じ、空中へ投げ飛ばす。

苦手なタイプでの攻撃にも関わらず、フユカは焦ることなく紅眞へ指示を出した。

「紅眞君、体勢を立て直して! ブレイズキック!」

『おりゃーっ!』

重力を味方に付けたスピードを利用し、紅眞のブレイズキックが雅ちゃんにクリーンヒットする。

図鑑でスキャンした限りだと、守るはもう忘れちゃったみたいだね。

「もう1度ブレイズキック!」

「え、えっと……雅ちゃん、粉塵!」

『えぇ!』

雅ちゃんは紅眞の近くまで飛んでいくと、羽根を羽ばたかせて鱗粉のようなものを振りまいた。

『わっ!? 何だ、この粉グエッ!?』

「紅眞君、大丈夫!? ……これは1本取られちゃったね」

な、何だったんだろう今の?

紅眞の足元が勝手に爆発したように見えたけど。

『粉塵は虫タイプの技ではありますが、炎技を使った相手にダメージを負わせる技ですのよ』

雅ちゃんの説明を、"ほぇー"と言いながら聞く。

"怒りのあまり習得しちゃったんだよねー"と優しい(生暖かいとも言う)笑みで言うフユカに、"あの時のことは忘れてくださいまし!"と返す雅ちゃん。

っていうかあの雅ちゃんを怒らせるなんて、何したのその人たち……。

「紅眞君、そろそろ体は軽くなってきた?」

『おぅ、いつでも行けるぜ!』

「よし、じゃあ炎の渦!」

「虫のさざめき!」

炎タイプの技と虫タイプの技が激しくぶつかり、その衝撃波で雅ちゃんが空中へ巻き上げられてしまう。

フユカはその僅かな瞬間を見逃さなかった。

「今だよ紅眞君! ブレイズキック!」

『雅にはわりーけど、俺が勝ーつ!』

特性の加速によって上がったスピードに追い付けず、雅ちゃんは抜群技を受けて倒れた。


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