06
「で。どうしようもないから、とりあえずここに戻ってきたと」
「はい……」
「おっしゃる通りです……」
「初めて見るポケモンだからって無防備に近付くとかバカなの?」
"璃珀と龍矢もいながら何してんのさ"とため息を吐く碧雅の言葉がグサリと刺さる。
確かに今回の件は自業自得だけど、好奇心が抑えられなかったんだよ……!
璃珀が"まぁまぁ"と宥めてくれたけど、すぐさま"璃珀はユイに甘過ぎ"って返されてた。
「ねぇねぇ、その子ってどんなポケモンだったの?」
悠冬君の質問に、フユカがあのポケモンの特徴を掻い摘んで話す。
……目の前で自分が喋ってるっていうのは、何か不思議な感覚だな。
「青い体に触覚、か……。チョンチーとは違うんだよな?」
「うん、触覚の先っぽも青かったし……」
「まさか……」
「……何か心当たりがあるの、璃珀?」
「俺も見たことは無いけど、ご主人たちの話とよく似たポケモンの話を聞いたことがあるよ」
璃珀の話をまとめると、こうだ。
シンオウでは昔から、"マナフィ"と呼ばれる幻のポケモンの目撃例がいくつかあるそうで。
そのマナフィというポケモンは、2本の触覚から放たれる光で人格を入れ替える能力を持っているらしい。え、まんまじゃん。
「けど、そのマナフィは随分とイタズラ好きみたいだね。
本来その能力は敵から逃げる時や、相手と心を通わせる時に使うようだから」
璃珀の話を聞いていた緋翠が、"そういえば……"と口を開く。
「同種であるフィオネの中でも、とりわけ優れた個体のみがマナフィへ突然変異するのだと聞いたことがあります。
それ故に"蒼海の王子"と呼ばれ、海に住む水ポケモンたちのリーダーでもあるのだとか」
「フィオネたちの、ではないのですか?」
「とある伝承では、あのカイオーガですらマナフィには逆らえないと言われているね」
「カイオーガだと!? あんな奴を従えるポケモンを見たのか、ちんちくりん!」
「あっちゃん、どーどー。そっちはフユカちゃんだよ」
"絶対に強いじゃないか!"と少し興奮気味に私(中身はフユカ)へ詰め寄る晶を白恵が宥める。
そこからしばらく、私たちは彼の質問攻めにあった。
「しかし……マスターとフユカ様は元に戻るのでしょうか?」
「確かにそうだな。このままではカロスに戻ることもできない。
それに何より、どちらを姫とお呼びすれば良いのか……!」
「問題はそこじゃねぇだろ」
"あぁ姫、なんとお労しい……"って言いながらフユカ(中身は私)を真っ直ぐ見つめる白刃君。
え、ちょっと待って。これ思ってた以上に恥ずかしいよ!?
慣れもあるんだろうけどフユカみたいに平然としてるなんて無理!
当のフユカは"わぁ、こうして見ると映画のワンシーンみたい"なんて言ってるし!
「白刃ー。見た目はフユカだけど中身はユイだからなー?」
「た、助け舟ありがとう紅眞……」
「時間の経過で元に戻るとは思うけどね。敵から逃げる時にも、この能力は使われるわけだし」
そっか、敵から逃げるためには距離を取らなきゃいけないもんね。
人格を戻すために敵前に戻っていったら元も子も無いか……。
「璃珀がそう言うなら大丈夫かな?」
「だね。……そうだ!
ねぇユイ、せっかくなら今しかできないことやってみようよ!」
「今しかできないこと?」
フユカすごく楽しそうだけど、何をするんだろう?
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