10


あれから私たちは何事も無かったかのように職場体験を終えて、料理自慢コンビの作った夕飯を食べる。

お腹がペコペコだったのと、2人の料理が美味しいのもあって私もついおかわりしてしまった。

「ナオト、育て屋さんの仕事体験はどうだった?」

「あぁ、良い経験になったよ。自分が育て屋を持った時に、参考にしたいことがたくさんあった。
レイナはどうだい? 力仕事も多かったし、疲れたろう?」

「うん、もうクタクタ……。でも、とても楽しかった。
育て屋を経営することになったら、私はポケモン用のお菓子でも考案しようかなぁ」

今日体験したことを思い返しながらナオトと話していると、そんな私たちをニコニコと見ているジュウゾウさんとユキエさんがいて。

不思議に思っていることに気付いたのか、ジュウゾウさんが"いやはや"と呟いた。

「何とも似合いの2人だと思ってなぁ。
ワシとばあさんが若かった頃を思い出すんじゃ」

「えぇ、本当に。レイナさん、ナオトさん……心から愛する人に出会えた"奇跡"を、どうか大切にしてくださいね」

「はい、それはもちろん」

即答でそう言い切ったナオトの言葉に気恥ずかしさを感じながら、私もそれに頷く。

そんな私たちに笑みを深くした彼らは、今度は勇人を呼ぶ。

勇人がジュウゾウさんの隣に座ると、彼は勇人の頭をクシャクシャと撫で始めた。

「わっ、どうしたんだよじいさん? 俺ぁもう、頭撫でられて喜ぶ歳じゃねぇって!」

口ではあぁ言ってるけど、満更でもなさそうだぞ勇人。

ユキエさんも2人のやり取りを見て"ホホホ"と優しく笑う。

「まぁ良いじゃないか。せっかくうちに帰ってきたんじゃから。
ワシらには子どもがいなくてな。お前がうちにいた時は、お前がワシらにとっての我が子じゃった。
だからこそ……今こうして成長したお前の姿を見られて本当に嬉しい」

「ありがとう勇人。
この家を守ってくれて……この家を忘れないでいてくれて」

崩れた髪を掻き上げたり撫で付けたりしながら、勇人はニッと笑って"当たり前じゃねぇか"と言った。

「今でこそ俺の"居場所"はレイナんとこだけどな。
"帰る場所"ってんなら、アンタら2人のいる場所に勝るとこは無ぇさ。
育て屋じゃなくてもそれは変わらねぇよ」

そんな勇人を見て、彼を里帰りさせて良かったと心から思ったのだった。


[*prev] [next#]






TOP
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -