02


「なぁレイナ。お前、家に帰りたいとか思わねぇのか?」

「え?」



事の発端は、勇人の口から飛び出した素朴な疑問だった。

彼の言わんとすることが分からず、思わず首を傾げてしまう。

「どうしたの、急に?」

「いや……昨日夢にじいさんとばあさんが出てきて、懐かしくなってさ。
そういえばお前から、自分の家族や生まれた場所のこと聞いたこと無ぇなって思っただけなんだけどよ」

勇人は私たちの仲間になる前、ズイタウンの育て屋さんで暮らしていた過去がある。

ユキエさんもジュウゾウさんも彼にとっては想い入れのある2人で、大切な家族なんだよね。

「うーん、特にそう思ったことは無いかなぁ。実の親のことは朧気にしか思い出せないし、私は今の生活に満足してるから。
……でもそうだね。全く関心が無いかと言われれば、そうでも無いかな」

「じゃあ明日みんなで行こうよ! あたしレイナの生まれた場所、見てみたい!」

"明日は無理かなぁ"と零すと、笑理が"えぇー"とむくれる。

膨れた頬を両手で挟むと"ポヒュ"と空気が抜ける音がした。

「実のところね、自分が生まれ育った場所の記憶もあまり無いんだ。
ぼんやりとは覚えてるんだけど、ハッキリとした記憶じゃなくて」

「何か思い当たる場所は無いの? もしかしたら、小さなことが手がかりになるかもよ?」

「手がかりねぇ……」

必死に記憶を手繰り寄せて、自分の故郷を思い描こうとする。

でも今は"海の見える街"であることを思い出すのが精一杯だった。

「海が見えるくらいかなぁ……」

「海ってことは、マサゴタウンかミオシティ?」

「どうだろう……。
海に囲まれてるっぽいからマサゴタウンは違うし、ミオシティみたいな港街ってわけでもなさそう」

「誠士、海の見える街ってのに心当たりあるか?」

「いや、残念ながら……。
私はこのメンバーで行った場所しか知らないし、皆と出会う前はあの洞窟から離れたことが無かったからな。
幸矢はどうだ? 私たちよりも他の街に詳しいだろう?」

「……。期待を裏切るようで悪いが、俺もマサゴタウンとミオシティくらいしか知らん」

あっという間に詰んだ。

というか、幸矢が知らないなら万策尽きたんじゃ……?


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