08
その後は何かもう、大変だった。
着替えるために更衣室に向かおうとした私とヒカリちゃんを、町の人たちが取り囲んだからだ。
みんな興奮冷めやらずって感じで、"すごかった"とか"感動した"とか賞賛の言葉をたくさんもらった。
怒濤の勢いだった町の人たちの波が引いた頃、入れ替わるようにナオトとジュン君たちが歩いてくる。
「2人ともお疲れ様」
「2人揃って優勝するとかすご過ぎだろ。罰金だ!」
"もー、すぐ罰金って言うんだから……"って頬を膨らませるヒカリちゃん。
呆れたような声だったけど、その表情は笑顔だ。
「あ、ジュンはこの衣装どう思う? ママが選んでくれたんだけど可愛いでしょ?」
「あぁ、良いんじゃないか? おばさん元コーディネーターだからセンスあるし」
ヒカリちゃんのお母さん、やけにコンテスト事情に詳しいと思ってたけど……コーディネーターだったのか。
「ナオトさんはレイナさんのドレス、どうですか?」
「わっ、ちょっ、ヒカリちゃん!?」
おもむろに腕を引かれてヒカリちゃんの前に立たされる。
目の前にはナオトがいて、その頬はほんのりと赤い。
「あ、あぁ……よく似合っているよ。それに……とても綺麗だ」
「……っ!」
何そのドストレートな殺し文句!? 効果は抜群だよ!
ヒカリちゃんは後ろで"キャー
"ってはしゃいでるし、緋色君はナオトの後ろでニヤニヤしない!
すると突然ナオトが上着を脱いだかと思うと、それを私の肩に掛ける。
直前まで羽織られていたそれは、彼の体温が残っていて暖かい。
「そ、その……上着は貸してあげるから、早く着替えておいで。風邪を引いたら大変だ」
「あ、ありがと……」
「んなこと言ってっけど、本当は今のレイナを他の男の目に触れさせたくねぇだけだぜ」
"オフショルダーだから肩出てるしな"って茶化されて、私とナオトはもう限界。
緋色君を引きずっていくナオトを背後に、"今すぐ着替えてきます!!"って叫びながら更衣室へ駆け込んだのだった。
(借りてた上着は洗濯して翌日返した)
[*prev] [next#]
TOP