03
「ヒカリちゃんは何か参加するの?」
「あたしはピンプクとパフォーマンス大会に参加するんです。
せっかく来てくれたんだし、一緒に出ましょうよ! あたし、またあのドレス着たレイナさん見たいなぁ」
「え゛っ!?」
"あのドレス"って、もしかしなくてもあれだよね!? ヨスガシティでアヤコさんに買ってもらったやつ!
正式なコンテストじゃなくても着飾るの!?
「こ、今回は遠慮しようかな。ヒカリちゃん、久しぶりの地元なんでしょ?
だったら君の方こそ成長した姿を見せなくちゃ」
すると隣で"えっ"て声が小さく聞こえた。今私の隣に立っているのは彼しかいない。
「"えっ"って……もしかしてナオトも?」
「あ、その……君が嫌なら無理にとは言わないけど……。
前に君のコンテストパフォーマンスを見たのはテレビだったから、生で見られたら嬉しいなって」
そう言って眉根を下げた表情がコリンクのように見えてしまって。
うぅ、やめておくれよ……私はそういう顔に弱いの!
「ほらぁナオトさんもこう言ってるんですし、レイナさんコンテストの優勝経験があるんですから大丈夫ですよ!」
そ、それとこれとは話が別じゃないかな!?
両手はヒカリちゃんにガッシリと掴まれてて逃げられない。
というか私が"出場する"って言うまで離す気無いな、これは!?
あーーー、こうなったらもう開き直るしかない!
「わ、分かったよ……。でもコンテストは今回で最後ね」
「やったー! 町の人たちもきっと喜びます!」
「ちょっと待って」
今、"町の人たち"って言った?
ヒカリちゃんが喜ぶのは分かるけど、何で町の人たち?
「誰が何を喜ぶって……?」
「前回あなたが優勝したヨスガのコンテストをね、"ヒカリの初めての晴れ舞台だから"ってこの町の住民みんなで見ていたの。
だからあの時優勝したレイナさんは、ちょっとした有名人なのよ」
(それでだったのか!)
どうりで町の子どもたち(特に女の子)にやたら話し掛けられると思ったよ!
「小さい子からおじいさん・おばあさんまで、"レイナさんのファンだ"って人もいるくらいなんですよ」
「えぇぇ……」
いきなりハードルが跳ね上がった気がするのは、気のせいだと思いたい。
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