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「だ、ダンデさん!?」
「キバナさんも!?」
いつの間にか私たちのバトルを見ていたらしい人混みをかき分けて現れた、2人の男性。
それはさっきスタジアムでバトルを繰り広げていた、ダンデさんとキバナさんその人だった。
驚きのあまり口をパクパクさせる私たちを見たキバナさんが、「突然悪いな」と言う。
「コイツ、お前たちのバトルを見るっつって聞かなくてよ」
「見てみろキバナ、彼女たちの連れているポケモンを!
どちらもガラルでは見たことの無い子だ!」
「へいへい、そうだな。
つか俺様の話聞けよお前。驚きで呆然とさせちまってんじゃねえか」
少年のようなキラキラとした瞳で焔君と悠冬を見るダンデさんと、そんな彼を若干呆れたように窘めるキバナさん。
スタジアムで強敵を前に目をギラギラさせていたのが嘘みたいだ。
「あ、あの! さっきのエキシビションマッチ見てました!
迫力があって、もう夢中になっちゃって!」
「とってもカッコ良かったです!」
「見に来てくれていたのか。それは嬉しいな!」
「ダンデにゃ結局勝ち越されたけどな。次は俺様が勝つ!」
キバナさんの戦線布告に、ダンデさんは"楽しみにしているぜ!"と朗らかに返す。
この2人、良いコンビだな。
「ところで君たち、ガラルへは観光で来たのか?」
「はい。私はカロスから来ました」
「私はシンオウから」
「へぇ? カロスも遠いが、シンオウとは長旅だな」
「遠路遥々、試合を見に来てくれてありがとう。
あ、そうだ、君たちの名前を聞かせてくれないか?」
「私はフユカです」
「私はレイナって言います」
ダンデさんは噛み締めるように私たちの名前を呟くと、"うん、良い名前だ!"と笑う。
この人の笑顔を見ていると、何だか元気が出てくるな。
こっちも思わず笑顔になるような、人を惹き付ける魅力がある。
「さて……。そろそろ戻るか、ダンデ」
「おっと、もうそんな時間か。
フユカ君、レイナ君、ガラルを思い切り楽しんでくれ!」
「じゃあな、2人とも。ナックルシティに来ることがあったら、宝物庫に行ってみてくれよ」
意気揚々と歩き出したダンデさんを"そっちは逆だ、バカ"とキバナさんが腕を引いていく。
キバナさんは最後にチラリとこっちを振り返り、ウインクをして去っていった。
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