05
「戻ったぞ」
あ、緑炎が帰ってきた。
「おかえり、緑炎」
「……何だこれ?」
緑炎が手に取ったのは私の龍笛。
「あ゛!」
緑炎には上手く吹けるようになってから、びっくりさせようと思ってたのに!
「龍笛……? 何でこんなもん」
……。
視線が痛い……。
ほら、すっごく怪訝そうな顔で笛を構えて……構えて!?
「ちょっと待って緑炎! 龍笛吹けるの!?」
〜♪ 〜♪♪〜♪
「え……」
龍笛が音を奏でる。
でも耳を掠めるのは、ただの音ではなく旋律だ。
とても綺麗で気が付いた時には、すでに演奏は終わっていた。
ってか、緑炎って龍笛吹けたんだ。
「最近吹いてないから鈍ってるな……」
「今のは!?」
雅が驚愕の色を浮かべて駆け込んできた。
あ、外で吹いてたから聞こえてたのか。
「緑炎、先ほどの旋律……あなたが吹いたのですか?」
「あ、あぁ。それがどうかしたか?」
「なんて美しい音色でしょう。まさに天を翔ける龍の声……。
緑炎、ぜひ私に龍笛の手解きをしてくださいまし」
「俺で良いのかよ?」
「はい、お願いしますわ!」
「私も!」
「……分かった。毎日はみてやれないが、暇な時に教えてやる」
「ありがとう、緑炎!」
よし、これで全部独学になることは免れそうだ。
まさか緑炎が先生になるとは思ってなかったけど。
でもこれで雅が1人寂しく練習することもないだろう。
「雅がこういうのを好きなのは知ってたが、なんでお前まで?」
「んー?
もともと和楽器……特に笛は好きだったから、この際趣味で始めようと思ってね。
内緒で練習して、驚かせようと思ってたんだけどなぁ」
「そうかよ。
……俺が龍笛を吹くのは、お前のためだ」
「え、何か言った?」
「いや、別に。
明日は時間があるから、お前も一緒に教えてやる。
せっかく始めたんだから簡単に放り出すなよ」
「うん、頑張るよ!」
上手くなって、いつか緑炎と雅と3人で一緒に演奏するんだ。
空に龍の声を響かせて……。
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