05

ゴウカザルに連れてこられたのは、岩がむき出しになっている河原だった。

『うし。これからお前に新しい技を教えてやる。
瞬速の拳を放つ、"マッハパンチ"だ。
手本を見せるから、真似してやってみな』

ゴウカザルは大きな岩に狙いを定めると、その岩をパンチで粉砕した。

何が起きたのか全く分からないくらい速いパンチだった。

『す、すごい……』

さっそく真似してやってみたけれど、どうしても素早く打ち出せない。

岩もビクともせず、ほんの少し欠けたくらいだ。

『全然腰が入ってない。もう少し体の重心を……』

ゴウカザルは根気強くトレーニングを付けてくれた。

教え方もとても上手くて、彼の指導は自然と頭に入ってくるものだった。

そうしてパンチの練習をすること、約1時間。



『えいっ!』



ドゴンッ! ピシッ!

彼のように粉砕することは出来ないけど、岩に亀裂を入れることが出来るようになった。

パンチのスピードも、練習を始めた時とは比べ物にならないくらい速くなった。

『上出来だ。それくらいの速さで打てるようになれば、ジム戦でも充分通用するだろ。
やっぱり、お前は見どころがある。よく頑張ったな』

『うん! ……じゃなくて、はい!
ありがとうございました、先生!』

『おいおい、よせよ。"先生"なんて柄じゃねぇさ』

新しい技のコツを覚えて、思わず笑顔になる。

この技をマスターして、彼や四天王のゴウカザルといつかバトルをしてみたい。

そんな夢が出来た。



「焔ー? どこにいるの?」

あ、レイナの声だ!

『おーい、僕はここだよ!』

『お前のトレーナーか?』

『うん、レイナっていうんだ!』

レイナは僕を見つけると、ほっとした顔で駆け寄ってきた。

「やっと見つけた!
勇人が"出掛けてくる! って言ったまま帰ってこない"って言うから、心配したんだよ?」

『うっ……。ごめん、レイナ……』

無事なら良かったよ、と笑うレイナ。

隣にいるゴウカザルに気付いて、首を傾げた。

「君は……ゴウカザルだよね?
ありがとう、焔と一緒にいてくれて」

『いや、俺は別に何も』



「おーい、どこにいるんだ相棒?」



突然聞こえてきた、別の声。

驚いてキョロキョロと周りを見る僕たちだったけど、ゴウカザルは"俺のトレーナーだ"と静かに笑った。


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