04
誰かが僕の頭上を通り抜け、後ろにいるスピアーに拳を叩き込んだ。
「え……」
『コイツにも悪気があったわけじゃねぇんだ。
許してやりな、スピアー』
僕とスピアーの間に入ったのは、ゴウカザルだった。
『うるせぇ! ソイツは俺たちの至福の時間を邪魔したんだぞ!』
『だからってなぁ……子どもを相手に複数で襲うなんざ、随分大人気ないことをするじゃぁないか。
何なら、俺がここでお前たち全員の相手をしてやっても良いんだぜ?
見ての通り、俺は炎タイプ。黒焦げにされたくはないだろ?』
ゴウカザルの不敵な笑みを見たスピアーたちは、悔しそうに舌打ちをして巣へと帰っていった。
『あ、あの……助けてくれて、ありがとう』
『災難だったな、お前。
技を磨き上げるのは良い事だが、この辺り一体はスピアーたちの巣が多い。
練習するなら広い草原や河原にした方が良いぜ』
『え? どうして僕が技の練習してるって……』
『散歩がてらこの森に入ったら、偶然お前を見かけてな。
技の精度はまだまだ未完成だが……俺が見る限り、お前は見どころがある。
少しくらいなら教えてやる。着いてきな』
そう言って来た道を戻っていくゴウカザル。
僕は慌ててその背中を追いかけた。
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