03
ポケモンセンターを出てすぐ。
笛を吹いている人物はそこにいた。
「雅?」
雅がハッとしたようにこっちを振り返った。
「あらフユカ。
ごめんなさい。うるさくしてしまいましたか?」
「いや、そんなことないよ。綺麗な音だったから気になったんだ」
雅が吹いていたのは龍笛という笛。
低い音から高い音まで縦横無尽に表現する様子を、龍の鳴き声になぞらえてこの名前になったのだそうだ。
「龍笛に似た笛に、能管や篠笛、篳篥(ひちりき)などもありますのよ」
能管と……ひちりき? は分からないけど、篠笛って祭囃子の時に使われる楽器だよね。
「雅って、伝統芸能とか好きなの?」
「伝統芸能と言いますか……大昔の風習や文化に触れることが好きなのです。
この龍笛もそれがきっかけで始めたのですが、先日始めたばかりなもので上手く音が出なくて」
ここで私がアドバイス出来たら、どれほど良かっただろう。
生憎、私はリコーダーしか笛の経験はない。
「龍笛ねぇ。私が住んでたところでも、吹いてる人はごく一部しかいなかったなぁ。
私自身も今日初めて本物を見たし」
少ししか聞いてないけど、本当に綺麗な音だった。
たくさん練習して自在に吹けるようになれたら、雅も喜ぶだろうなぁ。
ついでに言うと、龍笛に対する私の興味心に火が着いた。
「ねぇ雅。私も一緒に練習しても良い?」
「え?」
キョトンとしてる。可愛い。
「一緒に練習する方が、お互いの良いところと悪いところが分かるかもしれないでしょ?
それに、1人で演奏するよりも2人で演奏した方が絶対楽しいよ!」
私の提案に、雅はふんわりと笑いながら頷いてくれた。
「では、まずフユカの龍笛を買わねばなりませんね」
もともと和楽器が好きだったし、せっかくだから趣味にしようかな!
[*prev] [next#]
TOP