05
「レイナが行方不明になって、レイナのお母さんが亡くなってからもずっとここにいたってところまでは大丈夫だよね?」
「お、おぉ……。自分のモンスターボールも、大事に持ってたんだろ?」
「うん。デンジさんのお世話になりながら、この家でずっとレイナが戻ってくるのを待ってた。
でもある日、ディアルガとパルキアが私を訪ねてきたの」
「「えっ!?」」
思わぬカミングアウトに、ナオトと一緒になって声を上げる。
時間を司るポケモン・ディアルガと、空間を司るポケモン・パルキア。
神子である私たちにとっては(カッコ良く言えば)創造主に当たる彼らが、何故当時ユニランだった來夢に会いに行ったんだろう?
「当然初対面だったから、私怖くて初めは何もできなかったんだけど……。
ディアルガがこう言ったの。"ディアーナに……レイナに会いたいか"って」
「ではディアルガは……彼らは來夢が奥様のパートナーだということを知っていたのか?」
「たぶん。私どうしても会いたかったから、その話に飛びついた。
でもユニランのままじゃダメだって言われて……。ディアルガがある条件を出したの。
それを受け入れる覚悟があるのなら、レイナに会わせてやるって」
「それは……どんな条件だったの?」
「……自分の寿命の一部を使って、ユニランからランクルスまで一気に成長させること」
「え……?」
衝撃の内容に、誰もが言葉を失った。
來夢は……この子は、私に会いたい一心でその条件を飲んだというのか。
例えそれが自分の命を削る結果になったとしても……それを覚悟の上でその選択をしたのか。
「じゃあ、アンタは他のランクルスよりも……」
「うん、他の子に比べれば長生きはできないよ。
でも、あの時の選択は間違いじゃなかった。こうしてここにいるみんなで穏やかな生活を送れることが、とても嬉しい」
來夢のその言葉は本心から出ているものであることは疑い様がなく、胸の中で込み上げてくるものを感じる。
10年も1人で私が戻ってくるのを待ち続けて、寿命の一部を犠牲にして……。
そこまでしても良いと思ってくれるほど、私と來夢の絆は強固なものだったんだと今更ながらに気付いた。
でもシンジ湖で再会した時、私がこの子のことを覚えていないという現実を突きつけられて……どれだけやるせなかっただろう。
「來夢……!」
「何、レイナ……わっ!?」
「……めん……本当にごめんね……!」
食事中だしお行儀が悪いのは百も承知だけど、それでも來夢を抱き締めずにはいられなかった。
困惑するように彷徨っていた來夢の両腕が背中に回される。私と同じ人間の姿を取るそれは、とても暖かい。
"顔を上げて、レイナ"という彼女の声に、その言葉の通りゆっくりと顔を上げる。
視界に映った來夢の表情は、とても穏やかなものだった。
「レイナ、私はあの時の選択を後悔してないよ。
こうして"またあなたに会えて"、私は本当に幸せなんだから」
來夢がニッコリと笑顔を浮かべる。
それは彼女の……心からの笑顔だった。
ユキハナソウの花言葉は……"また君に会いたい"――。
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