03


「窓拭き終わったぞー。さっき笑理と天馬が大慌てで走ってったけどよ……何かあったのか?」

少し深刻そうな顔をした勇人に、さっきの写真を見せながら事情を話す。

すると2人とも納得が行ったのか、いつもの表情に戻った。

「へぇ、來夢の誕生日だったのか。そりゃ盛大に祝わねぇとだよな!」

「そうだな。誠士と緋色に必要なものを聞いて、買い出しに行ってくるか。
來夢は、何か食べたいものは無いのか?」

「私はこうしてみんなと一緒にいられるだけで十分だよ」

「まぁそう言うなって! お前の誕生日パーティーなんだぜ?
主役が遠慮してどうすんだよ」

"こういう日くらいワガママ言ったって、誰も怒りゃしねぇよ"という勇人の言葉に、來夢が一生懸命頭を悩ませ始める。

悩みに悩んだ末に、來夢は"……オムライス"と呟いた。

「よっしゃ、オムライスだな? 疾風、俺らもキッチンに行こうぜ」

「あぁ。ケーキも買ってきた方が良いか、レイナ?」

「流石に今から作ると時間が遅くなっちゃうからね。お願いして良いかな?」

「分かった」

勇人と疾風が部屋を出ようとするのと同時に、銀嶺が部屋の入り口から顔を出す。

未だ片付いていないアルバムの山を見て、"何やってんだ"と言わんばかりにため息を付いた。

「おい、まだ片付かねぇのか」

「あっ、ごめん銀嶺。懐かしい写真ばっかりだったから、つい……」

写真を選別する機会はいくらでもある。少しずつ進めて行けば良いかと本棚へ全部しまい込んだ。

彼の紅い瞳がある1枚の写真を見ていたことに気付かないまま、私たちはパーティーのための買い出しに出かける準備に向かった。



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