02
お昼ご飯を食べ終わって、みんなでアルバムの整理を始める。
中身のほとんどは私が小さい頃の写真で、お母さんやユニランだった頃の來夢も写っているものもあった。
「おや。この緑色の丸いポケモンは、もしや來夢ですか?」
「そうだよ。お母さんから1つだけ貰ったモンスターボールでゲットしたんだっけ。
デンジお兄ちゃんと知り合うまでは、唯一の友達だったなぁ」
懐かしいと言って笑うと、私の隣でアルバムを覗き込んでいた笑理が"えっ?"と首を傾げた。
「他のお友達いなかったの? 何で、何で?」
「……私、お父さんがいないんだよね。
周りに"片親だけなんて可哀想"って言われるのが嫌で、自分から距離を取ってただけだよ」
シン……とほんの少しだけ部屋が静かになる。
今でこそ人にもポケモンにも友達がいる私だけど……昔は人見知りが激しかった。
私がまだ5歳くらいの頃、近所に住んでいた男の子に"父親がいないなんて変だ"と言われたことがあった。
今となっては、あの男の子がそう思うのは仕方のないことだと納得できるけど……。
それでもあの頃の私は、子どもながら"家族のカタチ"を否定された気がして悲しかったんだと思う。
"どうしてそんなこと言うの!"って大泣きしたような記憶がある。
それ以来、私は誰とも遊ばなくなって。家族以外の大人からも、子どもからも距離を取るようになっていった。
"私はお母さんと楽しく暮らしてるし、自分を可哀想だなんて思ったことはない"
そうやって心を閉ざして2年程過ぎた頃に、デンジお兄ちゃんと知り合ったんだよね。
「……なーんて。湿っぽくなっちゃうから、この話はやめやめ!
あ、これ初めて來夢の誕生日パーティーした時の写真だ!」
「えっ、どれどれ? ……プッ……ハハッ、來夢ブレブレじゃん」
「だってクラッカー見るの初めてだったし、あんなに大きな音がするなんて知らなかったし……!」
写真を見てたまらず噴き出した天馬に向かって、來夢が必死に弁解する。
"ごめんって、そんなに怒らないでよ"と言う彼の顔は、眉尻を下げながらもどこか楽しげだ。
そんな様子を微笑ましく思いながら、ふと目線をカレンダーに移してピシッと固まる。
青刃が"奥様?"と声をかけていることにも気付かず、私はつい"あぁっ!?"と大声を上げてしまった。
「今日……來夢の誕生日じゃん!」
「「ええっ!?」」
「そうなのか、來夢?」
「誕生日って言っても、実際に生まれた日って訳じゃないよ。
私がレイナが初めて出会った日って意味合いが強いかも」
「あたし、誠士と緋色にパーティーしたいって言ってくる!」
「あっ、笑理待って! 俺も行く!」
笑理と天馬がバタバタ、ドタドタと部屋を出て行くのと同時に、窓拭きを頼んでいた疾風と勇人が入ってきた。
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