05
「まずはチョコレートの下準備からだ。
溶かしやすくするために、板チョコを細かく刻む。
包丁使う時の左手はニャルマーの手の形だ。包丁の側面を指に滑らせるように動かせよ」
「分かった。……結構力がいるんだな」
「まだ焦る必要はない。ゆっくりで良いから、手を切らないように気を付けてくれ」
無心になって包丁を動かし、何とかチョコレートを刻むことができた。
刻んだチョコレートをボウルに移し、今度は生地に使う粉類をふるいにかける。
「よし、じゃあ次はチョコレートを溶かすぞ」
溶かすということは加熱する……つまり温めるということだ。
それなら、と僕はフライパンを手に取る。
すると緋色がギョッとした顔でストップをかけてきた。
「何でフライパン持ってんだよ! しまえ、しまえ!」
「えっ、溶かすなら火にかけた方が早いんじゃないのか?」
「バカ野郎! んなことしたってチョコレートは溶けねぇし、むしろボソボソになるわ!」
「ナオト、チョコレートを溶かす時はお湯を使うんだ。
ナベにあらかじめお湯を沸かしていたのもそのためだ」
「なるほど……」
そういうことならと、今度はチョコレートの入ったボウルにお湯を入れようとした。
が、お玉を手に持つと同時に即ストップがかかる。
緋色には"シャバシャバのチョコレートで生地がまとまるかよ!"と叱られてしまった。
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