04

「材料はこんなものだろうか」

「充分だ。悪いな誠士、お前にまで付き合ってもらってよ」

「気にするな。私も何か作ろうと思っていたところだ」

(何が始まるんだ……)

一夜明けて、翌日であるホワイトデー当日。

僕は緋色にされるがまま、キッチンまで連れてこられた。

目の前では緋色と誠士がチョコレートやらナッツやら、調理器具やらを作業台に並べている。

「そろそろ始めるか。よく聞けよ、ナオト。
お前にはこれからブラウニーを作ってもらう」

「ブラウニーを?」

「緋色から話は聞いた。レイナに手作りの菓子を贈りたいのだと。
私も彼女ほど菓子作りは得意ではないが、できることがあれば協力すると申し出たんだ」

彼らの話を頭の中で少しずつ整理する。

つまりは、"2人で教えてやるから作り方を覚えろ。そして作って渡せ"ということらしい。

(あぁ、だから材料が多めにあるのか……)

作業台には僕たち3人がそれぞれ作ったとしても有り余るほどの材料が用意されている。

自分で言うのも情けない話だが、あの量は明らかに何度も失敗すること前提で買い込んで来たんだろう。

「誠士はともかく、俺の指導は厳しいぜ。
材料か時間が無くならねぇ限りは一切妥協無しだからな」

「わ、分かった。よろしく頼む」

誠士から受け取ったエプロンを身に付け、気を引き締める。

……が、ふと気になることができた。

「そういえば、他のみんなは今どうしてるんだ?
來夢と笑理がレイナを外に連れ出しているところは見たんだが……」

「レイナには、日が暮れるまで出かけていて欲しいと伝えてある。
サプライズがバレる心配はない」

「幸矢はポケモンセンターで部屋借りて自分の作業してるぜ。
あとの連中はリビングの飾り付け道具の買い出しだ。
タイムリミットは午後6時。それまでに完成できなかったら、今年のお返しは諦めな。
……よし、じゃあ始めるぞ」

我が家の料理人2人による、ブラウニー作りの指導が始まった。



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