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「エレキブル、戦闘不能! ブイゼルの勝チ!
ヨッテ勝者、チャレンジャー・レイナ!」
審判ロボのコールが、高らかにバトルフィールドへと響き渡る。
「か、勝った……? 私が、お兄ちゃんに……?」
『何だ、嬉しくないのか?』
トコトコと歩み寄ってきた幸矢。その顔には微かに笑みが浮かんでいる。
彼の表情を見た途端、ジワジワと勝利の実感が湧き上がってきた。
「う……嬉しいに決まってるじゃん! ありがとう幸矢、よく頑張ったね!」
『ングッ!? おいやめろ、首が締まる!
それより、放っておいて良いのか? ジムリーダーが固まってるぞ』
幸矢にそう言われてデンジお兄ちゃんを見る。彼は俯いたまま微動だにしなかった。
流石に心配になって声を掛けると、今度は突然大声で笑いだした。
バトルフィールドに合流したオーバさんとナオトも、呆気に取られた顔でお兄ちゃんを見ている。
「えっ……お、お兄ちゃん……?」
「……ハァ、久しぶりに楽しいバトルだった。
いつ以来だろうな、こんな気持ちになるのは」
するとお兄ちゃんがポンと私の肩を叩く。
私にとってはいくつになっても変わらない、大きくて暖かい手だった。
「ありがとうな、レイナ。お前のおかげで思い出した。
ジムリーダーとしてどうチャレンジャーと向き合うべきなのか。お前とのバトルを通して目が覚めたよ」
「じゃあ、約束してくれる?
ちゃんとチャレンジャー1人1人の想いに目を向けるって」
「あぁ、約束する。それに街の人々と触れ合えるジムリーダーの方が素敵な役職だってことにも気付けた。
……強くなったな、レイナ」
そう言って今度は私の頭を優しく撫でてくれる。
小さい頃にお兄ちゃんがよくやってくれた、"元気の出るおまじない"だ。
「ありがとう、デンジお兄ちゃん。でも、もう私子どもじゃないよ」
「そう言って膨れてるうちはまだまだ子どもだな」
「もー、お兄ちゃん!」
私たちの様子を見ていたナオトが突然噴き出し、肩を揺らして笑う。
それに釣られたオーバさん、私とデンジお兄ちゃんも笑顔になった。
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