09


放り投げたモンスターボールから幸矢が飛び出してくる。

それを見たデンジお兄ちゃんが、目を丸くして幸矢を見た。

「……水タイプが電気タイプを苦手なのは知ってるよな?」

「もちろん知ってるよ。でも、私は彼のやる気を尊重したかった。
幸矢が成長のために選んだことなら……私は全力でサポートするだけだよ」

彼の過去を初めて聞いた時、私は幸矢がそのことを忘れられないなら……それでも良いと思ってた。

幸矢の知るエレキブルは、良くも悪くも幸矢に影響を与えていたと思うから。

彼が自分の強さとは何かを考えるきっかけを作ったのは、間違いなくそのエレキブルだ。

でも……幸矢自身が過去のことだと割り切って、私たちと歩むことを選んでくれるなら。

お兄ちゃんのエレキブルと戦うことで、少しでも自信を持つことができるなら。

幸矢が示した決意を、私は側で支えたいと思ったんだ。

「大丈夫、幸矢は強いよ。そうでしょ?」

そう幸矢に問いかけると、ボソリと"あぁ……"と呟いた。

『コイツらの仲間になるまでは、何をしててもあのエレキブルの影がチラついていた。
一生その影に怯えながら生きていくのだと……そう思っていた。だが、それも今日で終わりだ。
あの日、コイツらについて行くと決めたことが……。レイナと歩んできた日々が間違いではなかったと証明する』

そ、そんなこと考えてたの!? ちょっと……いや、かなり気恥ずしかいんだけど!

とにかくやる気があるのは大変よろしいと思うよ!

「やる気があるのは理解した。泣いても笑ってもこれが最後だ。
楽しいバトルを期待してるぞ?」

そう言ってお兄ちゃんが挑戦的な笑みを浮かべる。

その目には最初の時とは違う、強い光が宿っていた。



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