08
「コイツが俺の切り札! 行け、エレキブル!」
(来た……エレキブル!)
"切り札"ってワードを使って来る辺り、彼はお兄ちゃんのエースポケモンだ。
実力は未知数だけど、サンダースやレントラーを凌ぐであろうことは容易に想像できる。
できるだけ勇人に体力を削ってもらった方が良いな。
彼は渋い顔しそうだけど……勝ち抜き戦だからそこは許して欲しい。
「勇人、もう少しだけ頑張れる?」
『ちと厳しいが、やれるところまでやってやらぁ。レイナの期待は裏切れねぇからな!』
「今度はこっちから行くぞ! エレキブル、電光石火!」
エレキブルが素早い動きで勇人に向かって突っ込んで来る。
とはいえサンダースのそれに比べれば、まだギリギリ目で追える範囲だ。
でも勇人にはレントラー戦でのダメージがある。だから……倒される前に大技で叩く!
「空に退避して! そのまま破壊光線!」
「ならこっちも大技だ! エレキブル、ギガインパクト!」
破壊光線とギガインパクト──。
ノーマルタイプ最強クラスの技同士が激しくぶつかる。
固唾を飲んで見守る私たちの目の前で、押し負けた勇人がバトルフィールドに倒れ伏した。
「勇人!」
試合の最中であることも忘れて、勇人に駆け寄る。
グッタリと伏せていた彼がゆっくりと目を開き、小さく"レイナ"と呼んだ。
『悪ぃな、負けちまった……』
「うぅん……誠士も勇人も、よく頑張ってくれたよ。ゆっくり休んでて」
『おぉ、ちっとばかし寝てるわ。……絶対勝てよレイナ、アイツと一緒に』
「……うん、後は任せて」
勇人の頭を一撫でしてモンスターボールへと戻す。
自分の立ち位置に戻り、最後のモンスターボールを手に取った。
「幸矢、レッツゴー!」
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