05
「へぇ、じゃあレイナたちはシンオウ地方から来たんだ!」
「うん。他の地方に行く機会なんて滅多に無いし、息抜きも兼ねてね」
みんなと別々で自由行動をしていた私と來夢は、とあるカフェで1人の女の子と小さな猫のようなポケモンと知り合った。
彼女はフユカといって、このカロス地方を旅して回ってるんだって。
しかも、フユカもトリッパーでポケモンの言葉が理解出来るらしい。
そして子猫のポケモンの方は蒼真君。
カロス地方に生息する、ニャスパーっていうポケモンなんだそうだ。
口数が少ないから人見知りなのかと思ったけど、そうではなくて単に無表情かつ無口なだけらしい。
「シンオウ地方かぁ……。カロスにはいないポケモンとかたくさんいるって聞いたよ。
確か最初のポケモンは、ナエトルとヒコザルとポッチャマの3匹なんだよね?
レイナはどの子もらったの?」
「私はヒコザルをもらったんだ。
たまたま新人トレーナー2人の旅立ちに立ち会ったんだけど、その時ヒコザルは選ばれなくてね。
すごくしょげてたのを見たナナカマド博士が、私に譲ってくれたんだよ」
「ナナカマド博士って優しい人なんだね!
プラターヌ博士からは、"初対面ではちょっと取っ付きにくい人"って聞いてたけど」
プラターヌ博士? の中ではナナカマド博士ってどんな人に映ってたんだろう?
その後も來夢との出会いや笑理と会った日のこと、誠士の作る料理が美味しいとかの話をした。
「そういえば、フユカはカロスを旅してるんだよね?
やっぱりシンオウにはいないようなポケモンとかいるの?」
「うん、たくさんいるよ。うちの雅と蒼真がそうだからね」
聞くところによると、雅ちゃんはビビヨンっていうポケモンらしい。
しかもビビヨンは10種類以上もの羽の模様があるんだって。
「そんなに模様の種類があるんだ」
「雅は、1番個体数の多い"雅な模様"っていう種類の模様なんだ。
珍しい模様を持つビビヨンほど個体数が少ないんだって。
私は、この雅な模様が1番好きな模様なんだよ」
そこまで言ったフユカは、ふと何かを思い出したように眉をひそめた。
どうしたんだろう?
「でも、トレーナーの中には"個体数の多い模様=ありきたり、どこにでもいる"って考えるトレーナーもいるみたいで……。
雅も、もともとは私のポケモンじゃなかったんだ」
「え……捨てられたってこと? 羽の模様だけで?」
「あくまで、"そんなトレーナーもいる"ってだけの話だよ。
雅な模様も、とっても綺麗な模様なんだ。これ見て」
フユカはポケモン図鑑を取り出し、ビビヨンのページを開いて見せてくれた。
そこには紫色の大きな羽を持つ、蝶々のような姿のポケモンが映っている。
「うわぁ、綺麗!」
「うん! 上手く言葉に出来ないけど、まさしく"雅"って感じ!」
「雅が聞いたら喜ぶよ。今でこそ自分の模様を悲観しなくなったけど、かなりコンプレックスだったみたいだから」
「そっか……。色々あったんだね、雅ちゃんにも」
「何かごめんね、空気が重くなるような話して。
ところでレイナ、ミアレガレットはもう食べた?」
「ミアレガレット?」
「うん。ミアレシティで有名な人気のスイーツなんだ。
他の地方から来た観光客は、お土産に買っていくこともあるんだよ。
すぐそこにワゴン車が来てるみたいだから、買いに行こう。
蒼真も食べるよね?」
『食べる……』
ミアレガレットかぁ……。
博士たちへのお土産分も買っていこう!
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