06

『くっ……! 迂闊に近づいたらこっちがグエッ!』

「レントラー!?」

レントラーがものすごい勢いで吹っ飛んで行った。

ドラゴンタイプの技でも屈指の威力を誇る技ではあるけど……流石にあれは痛そう。

彼には悪いけど、これで大幅に体力は削れたはず。

(後は……)

勇人は思う存分暴れ回った後、混乱して目を回し始めた。

この混乱をどう対処するかが問題だ。

実は勇人が逆鱗を覚えたと知った時、本人から言われていたことがある。

最初はその手を使うことに猛反対した。そのリスクは決して小さいものではないから。



"大丈夫だって! んなことでへばるような俺じゃねぇよ!
俺は誠士ほどのスピードは無ぇけどよ、タフさとガッツだけは誰にも負けねぇ自信がある。
俺を信じてくれるお前がトレーナーでなきゃ、俺だってこんなリスキーなことは言わねぇよ。
だから……いざって時は頼むぜ?"



勇人は私を信じてその背中を預けてくれる。

その信頼に応えられないで、何がトレーナーかってね!

「正直不安は拭えないけど……私、信じてるよ。
勇人、"自分に向かってドラゴンクロー"!」

『は……ハァッ!?』

「あのバカ! 自滅させるつもりか……!?」

突然おかしくなったみたいに自分を殴る勇人を見て、私以外の全員が呆気に取られながら戦況を見守る。

一頻り暴走した勇人の目に、強い光が戻った。

『……ッ! カーッ、痛ぇ!』

「言われてた通りにはしたけど……だ、大丈夫?」

『何てこと無ぇよ。我ながら良い1発だったし、スッキリ目が覚めたぜ!』

「5、6発殴ってなかった!?」

おまけに少しフラついたよね、今! 無理させたのは悪いと思ってるけど!

『細けぇこたぁ良いんだよ!
まだバトルは終わってねぇ。一気にケリつけてやろうぜ!』

「先手を打つぞ、レントラー! 氷のキバ!」

『お、おぅ!』

「飛んで、勇人!」

氷のキバをかわした勇人に、すかさずドラゴンクローを指示する。

ジムの壁際まで吹っ飛ばされたレントラーは、目を回して倒れるのだった。



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