02
ついに来た……。
「ここがナギサジム……」
目の前にそびえるナギサジムを見ながら、大きく深呼吸する。
時間はピッタリ。ポケモンたちのやる気も十分だ。
私たちにとって、これは最後にして最大の戦場になるだろう。
「本当に大丈夫かい、レイナ?
相手はシンオウ最強のジムリーダーだ。君たちが簡単に負けるとは思わないけど、それでも……」
「大丈夫。どんなに不利になったって、かじりついてでも諦めたりなんかしない。
それにこれは、私とお兄ちゃんの戦いなんだから……!」
お兄ちゃんはもちろん強い。だからこそ幼い頃はその背中に憧れを抱いてきた。
"お兄ちゃんみたいな、強くて優しいトレーナーになる"──そんな夢を描いてきた。
記憶を失っていてもジムの制覇を目指したのはきっと、この時のためだったんだ。
心のどこかで覚えていたあの夢を追いかけて、1人のポケモントレーナーとして彼に認めてもらうためだったんだって。
今は……そう思える。
「きっと勝っても負けても、これが最後のジム戦になる。
だったら悔いが残らないようにしたい。例え勝てなくても、少しでもお兄ちゃんが考えを改めてくれるなら……私はそれで良いの」
「……そうか、分かったよ。
こういう時、君は1度何かを決めるとテコでも動かないからね」
そう言って苦笑いを零すナオトだけど、その声音には私の勝利を願う響きがあった。
「僕は観客席から応援することしかできないけど……。君の勝利を願っているよ、心から」
「うん、ありがとうナオト。……よし!」
両手でほっぺをベチン! と叩いて気合いを入れ直し、ナギサジムへと足を踏み入れた。
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