06


「じゃあエレキブルは幸矢に任せるとして……あとをどうするか決めなきゃね」

「口を挟むようで悪いが……良いか、レイナ?」

作戦会議を再開させようとしたところで、疾風が挙手と同時に口を開く。

"どうぞ"と答えて先を促すと、彼は"自分もバトルに出してくれないか"と打診してきた。

「疾風、どうしたのだ急に?
今までマスター以外のトレーナーと戦いたい、と進言したことなど無かったではないか」

青刃の疑問も最もだと思う。

彼のこの提案は、私に"俺を自分の手持ちとして使え"って言ってるのと同じなんだから。

思わずナオトと顔を見合わせたけど、ナオトにとっても思ってもみないことだったのか目を丸くしている。

「本当はこんな無理を言うつもりは無かった。
飛行タイプにとっても電気タイプは天敵だ。
ナギサジムで戦力に選ばれても、俺はそのバトルを降りると言うつもりだった」

小声で"えっ……"と呟いたのは、天馬だっただろうか。

彼のバトルに対する姿勢を考えれば、そんなことを考えていたなんて誰が想像できただろう?

「だが幸矢は、自分の過去を断ち切るためにエレキブルと戦うことを選んだ。
心の傷を引き摺り続けるよりも、レイナと歩んでいくために成長する道を選んだ。
だったら俺も相性の不利から逃げるのを止める。"トレーナーの力になれる"と堂々と胸を張れるくらい強くなるために。
だから……お前さえ良いなら、俺を使ってくれ」

疾風の琥珀色の瞳が真っ直ぐ私とナオトを射抜く。

ナオトは疾風の意志を汲んだ上で、私に判断を委ねてくれた。

その場にいる全員が固唾を飲みながら私の言葉を待っている。

「……ありがとう、疾風。その気持ちはとても嬉しいよ」

「じゃあ……」

「でもね。その決意を……私は受け取れない」

疾風の口から、ヒュッと息を飲む音が聞こえた気がした。

「俺じゃ力不足だってことか?」

「そんなことあるわけないし、そんなこと微塵も思ってないよ。
私たちに力を貸そうとしてくれたことも、すごく嬉しい。
でも、君のその覚悟を預けるべき相手は私じゃないはずだよ」

まぁ……今回のことが私とお兄ちゃんの問題だってことも、少なからずあるんだけどね。

「預けるべき相手……」

「そ。ナオトがナギサジムに挑戦するって決めた時に、彼の力になってあげて」

「……そうか。お前がそう言うならそうする」

どこかスッキリとしたような表情で、疾風はコクリと頷いた。


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