05


幸矢が初めて、私たち以外の人に過去を打ち明ける。

エレキブルとの因縁のこと、前トレーナーとのこと。

そして私たちと出会った日、仲間になった日のことも全部。

「そんなことがあったのか……」

「何つうか……苦労したんだな、お前……」

ナオトたちから色んな言葉を投げ掛けられて、幸矢は"別に"と零した。

「だけど幸矢、本当にやるの?
トラウマってそう簡単に癒えるものじゃないし、自分が納得行くまで経験積んでからでも……」

「あぁ。むしろ今でなければ意味が無い」

「……同じ水タイプとして言わせてもらうけど」

ふと、今まで黙って話を聞いていた澪が口を開く。

彼の黒い瞳から、いつのも眠そうな色は消えていた。

「タイプ相性を考えたら、今回は他のメンバーに任せた方が良い。
エレキブルに限らず、電気タイプにとって水タイプは格好の獲物だからね」

"本当はあまりこういう表現はしたくないけど……"とほんの少しだけ眉をひそめた澪。

でも幸矢も幸矢で、決意は相当固いみたいだった。

「それでも……それでも俺はやる。今ここで、自分の過去にケジメを付ける。
俺はもうあのトレーナーのポケモンじゃない。コイツと……"レイナと一緒に強くなる"と決めたからな」

「……そう。そこまで言うなら僕はもう何も言わない。
……どうするの、レイナ?」

どうするも何も……ここまでの覚悟を見せられた以上、私の答えは1つだ。

「……分かった。じゃあエレキブルは幸矢に任せるよ」

「……あぁ。それで、そのバトルはいつからやるんだ?」

「あと45分後かな。移動の時間も考えると、35分後には出発したいところだね」

「分かった。笑理、急で悪いが付き合ってくれ」

「えっ、あたし?
……あっ、そっか! 電気タイプはあたしだけだもんね!」

幸矢は笑理と一緒に、ポケモンセンターに併設されたバトルフィールドへと向かって行った。


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