08
「デンジお兄ちゃん、私とバトルして。バッジは無しで良いから」
目の前の少女が……かつての幼馴染が、睨むようにして俺を見つめる。
「本気かい、レイナ?」
「冗談でこんなこと言わないよ。
お兄ちゃんが勝ったら、私はもう何も言わない。でも私が勝ったら、ジムリーダーとしてちゃんとチャレンジャーに向き合うって約束して」
困惑する隣の青年にも毅然とした態度で自分の思いを口にする。
その様子は、あの頃のレイナからは想像できない。
(行方不明になってる間に、随分変わったな……)
彼女ならあるいは……俺にポケモンバトルの楽しさを思い出させてくれるかもしれない。
根拠は無いが、それでも確信はあった。
もし彼女が弱ければ、その時はポケモンリーグに挑戦するとしよう。
「……分かった。じゃあ1時間後、ナギサジムで待ってるぞ」
"絶対に勝つからね"と啖呵を切ったその瞳は強い意志を宿し、凛然とした光を放っている。
それを見た瞬間ゾクリとする高揚感を感じ、口角が自然と上がったのは気付かないフリをした。
[*prev] [next#]
TOP