06


「レイナ……なのか?」

「う、うん……そうだよ」

差し出された手を取って立ち上がり、スカートに付いた砂をはたく。

すると今度はものすごい力で肩を掴まれた。

「お前……お前今までどこに行ってたんだ! おばさんも俺も、あの後みんなで探し回ったんだぞ!」

「ちょ、痛い痛い! 指くい込んでる!」

オーバさんとナオトをそっちのけで、街中なのを忘れてギャイギャイ騒ぐ。

置いてけぼりを食わされた2人は、呆気に取られた顔でポカーンとしていた。

「レイナ……彼とは、どういう関係なんだい?」

「あー、うん。彼……デンジお兄ちゃんとは、幼馴染なんだ」

そうだ、そうだった。

私はこの街で生まれて、シングルマザーの母親と2人で暮らしてて。

同年代の子たちに父親がいないことを揶揄われたのがきっかけで、自然と周りの人との間に壁を作っていた。

周囲に馴染めない日陰者だった私を、日向に連れ出してくれたのは彼だった。

引っ込み思案な私の手を引いてくれたのは、いつだって彼の暖かい手だった。

「幼馴染!? 俺もコイツとは付き合い長ぇけど、君の話は聞いたこと無いぞ」

「言っただろ、トレーナーになりたての頃に。
ナギサシティから行方不明になった女の子がいるって」

「それだけで幼馴染とか分かるかよ、普通!?」

どうやらディアルガたちの力で異世界に送られていた間に、私は神隠しに遭ったと報道されたらしい。

まぁ突然いなくなったらそう思うよね。

「じゃあ、彼女の母親はまだこの街に?」

ナオトの言葉を聞いて、デンジお兄ちゃんの表情が曇る。

「いや……レイナの母親は、心労が祟って何年も前に亡くなった。
死ぬ前に1目だけでも良いから、お前に会いたいって……最後までお前の無事を信じていたさ」

「……そっか」

育ての母親にはお別れも言わずにこの世界に戻って、実の母親の死に目にも会えなかった。

私って、親不孝だなぁ……。


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