05
「ポケモンリーグから戻ってきて、最初にやることがお小言か」
ふと聞こえてきた声に、その場にいた全員の視線が集中する。
灯台から出てきたのは背の高い金髪碧眼の男性だった。その後ろにはライチュウがトコトコとついて歩いている。
「やっと外に出る気になったか、ジムリーダー様よ」
「嫌味を言いに来たんなら帰れ。お前は俺の母親か」
「お前みてぇな腑抜けたジムリーダーを育てた覚えは無ぇよ!」
そ、想像以上に空気が悪いんですけど……。
ピリピリを通り越してビリビリしてるよ……。
オロオロと2人を見つめていたライチュウと、ふと目が合う。
すると彼(彼女?)はキラキラとした表情で私に飛び付いてきた。
予想外の展開に、私はライチュウを抱える姿勢のまま尻もちをついてしまう。
『レイナ! レイナだよね!?
良かった、帰ってきた! 僕のこと覚えてる!?』
「ちょ、ちょっと待っ……!」
どうやら"彼"の方だったらしい、というのはひとまず置いといて。
ライチュウが私のほっぺに、これでもかって勢いでグリグリと頬擦りしてくる。
何で初対面のはずのポケモンが、私の名前を知ってるの。そして頬ずりしてくるの。
「おい、どうしたライチュウ!?
つか、黙って見てねぇで止めろよ。お前のポケモンだろ!」
オーバさんがライチュウを抱えて私から引き離してくれる。
ライチュウは"あぁ〜、まだ頬擦りしたい〜"って言いながら私に向かって手をパタパタと振っている。
「あぁ、悪かった。大丈……?」
いっそ清々しいほどのダルッとした声のトーンで手を差し出した彼の目に、少しだけ光が灯る。
(あ……)
その顔を見て、全部思い出した。
私がポケモントレーナーを目指すきっかけを作った人。
この街を照らす太陽に負けないくらい眩しい笑顔で、独りぼっちだった私の手を引いてくれた人。
「デンジ……お兄ちゃん……?」
私の……"憧れの人"──。
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