02
ズイタウンで(色々と)濃い1日を過ごした私たちは、翌朝ジュウゾウさんたちに別れを告げる。
以前宿泊したホテル・グランドレイクまで移動すると、そこからは歩きでナギサシティまで向かうことになった。
「ここを道なりに進んでいくとナギサシティみたいだね」
『海が見える道なんて初めて! ねぇレイナ、自分で歩いてみて良い?』
「うん、良いよ。転ばないように気を付けてね」
笑理は"はーい!"と言いながら無邪気に走り始めた。
今日は天気が良いから青い海が太陽の光を受けてキラキラと輝いている。
遠くに聞こえる潮騒に耳を傾けながら、私はナギサシティに思いを馳せて歩いた。
「"太陽が照らす街"、か……」
「楽しみかい?」
「楽しみ……なのかな。実はまだ、生まれ故郷がナギサシティだって実感が無くて。
街を散策すれば、色々と思い出せるとは思うんだけど」
あの街に関する私の記憶は不完全で不明瞭だ。
それに何か、大切な人のことを忘れている気がする。
実の両親とはまた別の……気の置ける間柄の人がいた気がして。
「そういえば……ナオトはどこの出身なの?
ナギサシティでの用事が終わったら、ナオトの故郷にも行ってみたいな」
「君も1度行ったことがあるはずだよ。
僕の生まれ育った場所はハクタイシティだからね」
「ハクタイシティって……あの銅像がある街?」
あの街の銅像を、ヒカリちゃんとジュン君と一緒に見に行ったなぁ。懐かしい。
「でも私だけ里帰りさせてもらうのは悪いよ。
メイちゃんもご両親に会いたいだろうし、私もゆくゆくは……」
ご挨拶に、と続けようとした言葉はナオトの指に阻まれてしまう。
彼の顔に浮かんでいたのは、どこか寂しそうな笑顔だった。
「いつか言わなければならないと思っていたんだ。
僕とメイに両親はいない。僕たち兄妹は孤児院で育ったからね」
「……ゴメン、嫌なこと思い出させちゃった」
「レイナが謝ることは無いよ。不慮の事故だったし、どうしようもなかったんだ。
だからそんな悲しい顔をしないで。君の笑顔こそが、今の僕にとって何よりの活力なんだから」
「ナオト……」
『アンタら、惚気話は後にしてくれ。日が暮れても知らんぞ』
『まったくだ。甘ったる過ぎて胸焼けどころか砂糖吐きそうだぜ』
「そ、そうだね急いでナギサシティに行こうか!?」
『何で早口になるんだ』
離れたところから、笑理が"2人とも早くー!"と呼んでいるのが聞こえた。
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