02
「ふむ……こうしてハルと手を繋いで歩くというのも、なかなか乙ではないか」
ご機嫌な翠姫と手を繋ぎながら、サンヨウシティへ向けて歩く。
手を繋いでいるのは、翠姫たっての希望だ。
『人間の姿になることの何が良いんだ』
「貴様には分からぬであろうな、ひねくれ化け狐」
『んなもん分からなくても困らねぇよ』
フフンと何故かドヤ顔の翠姫に対し、紫闇は興味無いとでも言うように(実際興味無いんだろうけど)フンと鼻を鳴らした。
翠姫は人間の姿であることにご満悦みたいだけど……。
「でも、どうして突然人間の姿に? ツタージャの姿には戻れないの?」
「やれぬことは無いであろうが……ハルは、今のわらわは嫌いか?」
「そ、そんなことはないよ。
ただ……わざわざ人間の姿を取らなくても良いと思うってだけで」
人間の姿になっても元はポケモンな訳だから、私が翠姫を嫌うなんてことはないんだけど。
せっかくポケモンっていう生き物に生まれてきたのだから、人間の真似事をする必要は無いと思ってしまうのだ。
「わらわはこの姿も悪くないと思うがな。むしろハルと同じ姿形であるというのは実に良い!
ツタージャの姿に戻れずとも良いと思うくらいじゃ」
「それはちょっと……」
翠姫がツタージャの姿でいようと人間の姿でいようと、それ自体は彼女の自由だ。
私が口を出すべき事じゃなかったのは反省しなくてはいけない。
でもそれはそれとして、身を守らなくちゃいけない時に戦えないのは困るかな。
「……む、街が見えてきたな。
腹も空いてきたことじゃ。昼餉と参ろうではないか」
"行くぞ、ハル!"と私の手を強く握った翠姫が、無邪気な笑顔を浮かべて駆け出す。
……まぁ本人は楽しそうだし、良いか。
(後でちゃんとツタージャに戻れた)
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