03




『何、それ……。情けでも、かけようっての……?』



「え……」

自分の目を疑った。

だって……チョロネコが震える脚を叱咤しながら、立ち上がったからだ。

ボロボロな体に反比例するようなギラギラとした目が……私を真っ直ぐ射抜いている。

『だとしたら、ナメられたもんだね……。
傷付くことを恐れてたら、バトルなんか……できやしない……。
俺は悪タイプだし、正々堂々なんてガラじゃないけど……情けをかけられるのはゴメンだ。
好きでやってるんだから、アンタの感情だけで手加減しようとしないでくれる?』

「……」

何も言い返せなかった。

ポケモンが傷付いていくのが嫌なのは事実だ。でも、それは確かに私の感情で。

チョロネコがこのバトルにどう向き合っているのかを考えなかった。

戦うことを本気で嫌だと思っているなら、もっと強く拒むことだってできたはずなのに。

でも彼はそうしなかった。それは……Nと一緒に戦うことを選んだということに他ならない。

「……ゴメン、そんなつもりは……無くて……」

『……まぁ、今回だけは特別に許してあげるよ。
けど、次同じことしたら……アンタのその綺麗な顔に傷を作っちゃうかもね?』

『このっ……! どさくさに紛れてハルを口説くでないわ!』

翠姫がツルを伸ばして"シャーッ!"と威嚇する。

チョロネコはそんな翠姫を見て、"ここからは本気で仕掛けてきなよ?"と挑発的な笑みを向けた。


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