02
｢頼んだよ、ボクのトモダチ。……チョロネコ！｣
『任せなよ』
『フン、よもや男と戦うことになろうとは。
案ずるでない、ハル。あのこまっしゃくれた男なぞ、見事叩き伏せてくれよう！』
｢私は気乗りしないんだけど……｣
『大人ぶってるのはお前も同じだろ』
『貴様は黙っておれ、ひねくれ化け狐！』
モンスターボール越しにケンカが始まりそうな雰囲気に、思わず困惑する。
離れたところにいるチョロネコ？ の"何やってるのアイツ？"って声が聞こえた。
｢……ハァ、しょうがない。このまま付きまとわれても迷惑だしね。
できるだけ早く終わらせるよ、翠姫｣
『うむ！』
翠姫とチョロネコ、私とNの視線がぶつかる。
それを準備完了のサインと受け取ったNの方から仕掛けてきた。
｢チョロネコ、鳴き声だ！｣
『オッケー。俺の美声に酔いしれな』
｢えっと……ツルのムチ？｣
『任せよ！』
翠姫が背中からツルを伸ばし、チョロネコを思い切りビンタする。
バシィッ！ という音と同時に"痛ぁ！"って声が聞こえた。
｢接近戦に持ち込もう。引っ掻く攻撃！｣
翠姫の懐に潜り込もうとしているのか、チョロネコが猛スピードで距離を詰めてくる。
接近させれば危ないのは、嫌でも分かった。だから近付かれる前に手を打つ。
｢竜巻……！｣
『ほぅれ、吹き飛ぶが良い！』
凄まじい勢いの風に巻き上げられ、チョロネコの小さな体が地面に叩き付けられる。
あぁ、やっぱり……。敵とはいえポケモンが傷付くのは……嫌だな。
｢大丈夫かい、チョロネコ？｣
Nが心配そうにチョロネコへ声をかける。
何とか立ち上がろうとしているその足は、力が入らないみたいだった。
『ほぅ、竜巻を食らってまだ立ち上がる気力があるとは。
じゃが、今が好機よ！』
｢待って翠姫！ 攻撃しちゃダメ！｣
『ぬっ！？』
相手は立ち上がることもままならない状態なんだ。
そんな子に追い討ちをかけたくはない。
その時チョロネコの目が……翠姫ではなく私を睨んだ。
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