04

それから歩き続けること数十分。

前方にカノコタウンと同じくらいの規模の町が見えてくる。

入口に差し掛かったところで、私はひとまずポケモンセンターを探すことにした。

そこではポケモンに治療を受けさせることができて、旅のトレーナーなら誰でも宿泊できるらしい。

おまけに朝・昼・夕の食事(しかも無料)付きという破格の待遇だ。

お金は財布の中にいくらかあったけど、せっかく料金無しでこれだけの待遇を受けられるなら利用しない手はない。

「ポケモンセンターに着いたら部屋を取って、ひとまずご飯にしようか。

2人は何か食べたいものある?」

『腹に入りさえすれば何でも良い』

『わらわはレストランなる場所の料理を食べてみたいぞ!
研究所ではポケモンフーズばかりだった故な』

「レストランね、良いよ」

ポケモンセンターには一般的だという赤い屋根を探しながら歩いていると、短い坂道を降りたところで演説をしている男がいた。

その後ろには(おそらく男の部下であろう)てるてる坊主のような服を着た人が数人控えている。

「ワタクシの名前はゲーチス。プラズマ団のゲーチスです。
今日みなさんにお話しするのはポケモンの解放についてです」

自分をゲーチスと名乗る、派手な外套に身を包んだ男。

彼は"ポケモンの解放"という言葉にざわめく住人たちの前で、朗々と言葉を紡ぎ始めた。

「我々はポケモンと共に暮らしてきました。お互いを求め合い、必要とし合うパートナー……そう思っておられる方も多いでしょう。
ですが本当にそうでしょうか? 我々人間がそう思い込んでいるだけ、そんな風に考えたことはありませんか?」

「……」

「トレーナーはポケモンに好き勝手に命令している。仕事のパートナーとしてもこき使っている。
……そんなことは無いと誰がハッキリと言い切れるのでしょうか?」

住人たちの間に動揺とざわめきが広がっていく。

私はそんな様子をただ黙って見ていた。

ゲーチスはポケモンと人間は異なる生き物であること、人間が学ぶべき未知の可能性を秘めた存在であることを熱弁する。

その上で、人間がポケモンに対してすべきことは何かと問うた。

「我々人間がポケモンに対してすべきこと……それは"ポケモンを解放すること"です!
そうしてこそ人間はポケモンと対等になれるのです!
みなさん、ポケモンと正しく付き合っていくためにどうすべきかよく考えてください。
ご清聴感謝いたします」

ゲーチスはそう締めくくると、部下たちと一緒に颯爽と去っていった。

町の住人たちも複雑そうな表情でわらわらと広場を後にする。その場には私たちだけが残された。

「何だったんだろ、今の?」

『俺が知るか。だが人間がポケモンを解放することで狙われることが無くなるなら、俺は願ったり叶ったりだがな』

『全くもって不愉快な話じゃな。ハル、あの男の戯言なぞ気にするでない。
わらわはそなたを好ましく思うておるし、これからも一緒にいたいという気持ちに偽りは無いぞ』

「……ありがとうね紫闇、翠姫。
成り行きとはいえ、私といることを選んでくれて」

『勘違いするな。
俺とお前で利害が一致しているから一緒にいるだけで、人間は大嫌いだ。お前もその1人であるのを忘れるなよ』

『フン! 自己の利益しか眼中に無いとは、これじゃから男という生き物は好かぬ!』

「……ケンカはダメだよ?」



この時、私は気付かなかった。

私たちの様子を伺っていたらしい人影が、こっちへ近付いてきていることに……。


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