04


「……まだ何か?」

「ごめんなさいね、呼び止めてしまって。
あなたにお願いがあるの。良ければ、あるポケモンをあなたの旅の仲間として連れて行って欲しくて」

ポケモンか……どんな子なのかは気になるな。

「その子さえ良いなら私は構いませんが……。どうする、紫闇?」

『俺が知るか。お前の好きにしろ』

拒絶はしてないから良いのかな……?

とりあえず了承するとアララギ博士は表情を緩めた。

「でもその前に1つ聞きたいことがあるの。あなたのゾロアークって、オス?」

「そうですが、それが何か?」

「アララ……大丈夫かしら?」

突然博士の表情が曇る。

"そう、オスなのね……"と言って、続きを話すかどうか悩んでいるようだった。

でもその表情も束の間、博士は小さく息をついて口を開いた。

「実は……そのポケモンは1年前にある男の子と一緒に旅立ったの。
でもそれから1ヶ月ほど経った頃、研究所の前で倒れていたのよ。
全身キズだらけで、モンスターボールも置いてあったわ」

それは……その子は"捨てられた"ってことだろうか?

人間の勝手な都合で。

「幸い命に別状は無かったし、今はケガも完治してるんだけど……。
それ以来、自分をパートナーに選ぶ男の子を攻撃するようになったのよ」

つるのムチってことは、草タイプ……? いや、問題はそこじゃなくて。

("男嫌い"か……)

それなら紫闇の性別を聞かれたことにも納得がいく。

博士の話では、この研究所の男性スタッフですら迂闊には近付けないらしい。

よっぽど心の傷が深いみたいだけど……。

「一体何が……」

『全身キズだらけで放置されてたんだろ? トレーナーに暴力でも振るわれたんじゃないのか?』

「暴力って、虐待ってこと?」

『自分の言うことを聞かせるために"しつけ"と称して……とかは、この手合いにはよくある話だ』

「何それ……それがトレーナーのすることなわけ?」

強い憤りを感じて、思わず手を握り締める。

ふとポカンとした表情のアララギ博士と目が合った。

「……何か?」

「あなた……ポケモンの言葉が分かるの?」

(しまった……!)

ついさっきまでの感覚で紫闇と話してしまっていた。

本当なら、ポケモンと話せない方が当たり前なのだ。

「……さぁ、どうでしょう。それより、そのポケモンはどこに?」

「あ、そうだったわね。案内するからついてきて」

何とか例のポケモンを引き合いに出して、話題をそらすことに成功する。

別室に向かって歩き出した博士の後ろを無言で歩いて移動した。


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