07
『……変だと……思わないのか?』
気付けば俺は、胸の内を吐露していた。
話そうと思ってそうした訳じゃない。本当に、無意識だった。
「何が?」
『何が、って……ゾロアークっつったら、普通は赤だろ。俺の親父もお袋も、みんなそうだった』
人間は何も言わない。ただ黙って俺の話に耳を傾けているようだった。
『他の同族と色が違うってだけで、俺は疫病神扱いだった。
だから俺は、この色が……"俺自身"が嫌いだ』
「……私は好きだよ、紫」
『話を聞いてたのか?
普通のゾロアークはたてがみが赤いのに、俺は紫なんだぞ』
「……君がその色を持って生まれたことに、何か意味があるんじゃないかな?
私は君のたてがみを見た時、"綺麗だ"って思ったよ。今まで見た中で、1番綺麗な紫なんだ」
『……』
綺麗──
初めて言われた言葉だった。
「……それに、私も君と同じ。
"髪の色が違う"ってだけで気味悪がられて、散々イジメられたよ」
人間のその言葉に、俺は改めてそいつをマジマジと見回した。
そいつの髪は、今までに俺が見たどんな人間よりも異様だった。まるで降り積もった雪の色を写し取ったかのような、真っ白な髪。
「親も、周りの大人も……私の味方になってくれる人なんていなくて、1人ぼっちだった。
だからそんな話を聞かされちゃったら、放っておけないよ」
『……とんだお人好しだな、お前』
「そう、かな? 私も人間は大嫌いなんだ。
でも……ポケモンは好きだよ」
呆れ気味にそういった俺に、静かな声でそう返す。
俺はこの時、初めて心に少しだけ安息が訪れた気がした。
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