06

ハンターが逃げていった方向を呆然と見つめる。

「あの……ありがとう、助けてくれて」

あそこでゾロアークが戦ってくれなければ、私は本当に捕まっていたかもしれない。

でもゾロアークはプイッと顔を逸らした。

『あのままじゃいずれ捕まると思ったから反撃した、それだけだ。
お前を助けた訳じゃない』

「それでもだよ。結果として私たち2人とも助かったんだから」

『そうかよ。……何で俺を助けた?』

「え?」

ゾロアークの意図が読めず、思わず首を傾げてしまう。

彼は"さっきのことだ"と言って話を続けた。

『ハンターの狙いが俺だと分かっていて、何で助けたんだ?
俺を素直に引き渡していれば、お前は無傷でいられたものを』

「だって君、あいつに捕まりたくなかったんでしょ?
だから助けたかった、ただそれだけ」

『……は』

ゾロアークは驚きで開いた口が塞がらないみたいだった。

口元と手がワナワナと震えている。

『そんなことをしてお前に何の得がある?
"助けたかったから助けた"? 笑わせるな!』

ゾロアークの怒号が周囲に響く。

彼の声に驚いたマメパトたちが一斉に飛び立っていった。

『お前もどうせヤツらと同じだ!
傷の治療をしたのも、俺が色違いで珍しかったからだろ!?
傷物のまま売るよりも、無傷の方が高く売れるんだからな!
人間なんて生き物は所詮、俺たちポケモンを"私腹を肥やすための道具"としか見てねぇんだよ!』

「やめて!」

聞いていられなくなって、思わず私も声を荒らげた。

さっきのハンターと同じカテゴリーにされたくなかったのもあるけど。

それよりも、ゾロアーク自身が自分のことをあんな風に言うのが耐えられなかった。

「お願いゾロアーク、やめて……」

『泣いて謝れば許してもらえるとでも思ってるのか? 随分と都合の良い、浅はかな考えだな』

「違う、そうじゃない。"傷物のまま売る"とか、"無傷の方が高く売れる"とか……。
自分のことを道具みたいに言わないで」

あいつのやったことが……今まで人間にされてきたことが許せない気持ちは痛いほど分かる。

だけど、君が自分を道具としか見られなくなってしまったら……誰が君をポケモンとして見てくれるの?


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