03

何かの物音が耳をくすぐると同時に、意識が浮上していく。

ハンターの声も、バルジーナの声もしない。

(俺は……逃げ切れたのか……?)

しかし追跡から逃れたことへの安堵から来る睡魔は、ある声によって吹き飛ばされた。

隣には何者かが座り、俺の手を持って何かしようとしている。

こいつ、人間か……!

「染みるけど我慢してね」

『触るなッ!』

「わっ……!」

反射的に人間の手を叩いて距離を取る。

その手から転げ落ちたものはモンスターボールではなく、俺のよく知らない物だった。

「すぐに終わるから。お願い、君の手当てをさせて」

『これくらいの傷、すぐに治る。余計な世話だ』

「余計って……。
確かにお節介かもしれないけど、そんなボロボロなのに放っておけないよ」

『お前には関係無……俺の言葉が分かるのか?』

いや、まさかな……。"ポケモンの言葉を理解する人間"なんて話は聞いたことが無い。

だが聞き間違いでなければ、こいつは今……俺と会話を成立させたことになる。

「……やっぱり変かな。昔から動ぶ……じゃない、ポケモンの言葉が分かるんだ。
周りの人間はそんなこと、誰も信じてくれなかったけど」

『……』

やはり言葉が通じている……が、この際それはどうでも良いことだ。俺には関係無い。

それより……。

『おい、もう良いだろ。離せ』

「ダメだよ。まだ包帯巻いてないんだから」

人間が"ホウタイ"とかいう白い何かを手に取った時、近くでブウウゥンという音が響いた。


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