01
逃ゲロ、逃ゲロ、逃ゲロ!
頭の中でけたたましいサイレンのように同じ単語が何度も過ぎる。
「追え、バルジーナ! 絶対に逃がすなよ!」
背後でポケモンハンターの声が響く。
そして、目の前にはヤツのポケモンであろうバルジーナ。
『ここまでだ。我が主のため、大人しく捕まってもらうぞ』
絶対に捕まってたまるか。
人間なんかのコレクションになるなんざ、死んでもゴメンだ。
『それで俺が"はい、そうですか"って易々と捕まると思うのか?』
『ほぅ? そんな状態でなお足掻こうというのか。
諦めろ、お前に逃げ道は残されていない』
『そいつはどうかな?』
俺は手に握っていた砂をバルジーナに投げ付ける。
ヤツが目に入った砂をどうにかしている間に、俺は走った。
そのまま川へと向かう。確かその川の先には滝があったはずだ。
上手く滝壺に落ちることができれば……。
逃げ延びなければならない一心で、重くなってきた脚を叱咤して走る。
だが……。
『馬鹿め。あんな小細工が通用すると思ったか』
『バルジーナ!? クソッ……!』
砂が目に入ったように見えたのは演技だったのか!
進路をバルジーナに、退路をハンターに塞がれてしまう。
「よくやった、バルジーナ!
ったく、手こずらせやがって……抵抗できねえようにちっと痛めつけておくか。
悪の波動!」
バルジーナの悪の波動が俺の方に真っ直ぐ飛んでくる。
何とかそれをギリギリで躱し、滝壺に迷わず飛び込んだ。
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