02
温かい太陽の光と、走り抜けるそよ風を受けて目を覚ます。
目の前には色とりどりの花が咲き乱れ、朝露がキラキラと宝石のように輝いている。
(ここは……あの世? それとも三途の川?)
あの時自分で飛び降りたくせに、私は思わず頬をつねる。
ピリッとした痛みが、これが夢ではないことを物語っていた。
隣には何故かリュックが置いてあり、よく分からない道具やら木の実やらが入っている。
(私……死に損なったのか……)
ここがあの世界と違うということは何となく分かる。
この見慣れない道具や木の実がその証拠だ。
イチゴに似た木の実を手に取ってみる。
白いイチゴがあるのは聞いたことがあるけど、水色のイチゴなんて聞いたことがない。
(あの世でもあの世界でもないなら、ここはどこ……?)
ぼんやりと当たりを見回していると、草むらから生き物が飛び出してきた。
ハートマークに見える胸元が愛らしい、ハトのような生き物だ。
(あれって、もしかしてポケモン? 確かマメパトって名前だったような……)
ポケモンはあまり詳しくないけれど、"彼"がよくゲームを見せてくれていたから基本的なことは何となく分かる。
それじゃあ私は、ポケモンの世界に来てしまったのか。
マメパトは"わっ、人間だ"と言いながら、興味深そうに私を見つめている。
おいで、と声を掛けてみると、トコトコと歩きながら近付いてきた。
優しく抱き抱えて膝の上に乗せてみる。"温かいねぇ"と嬉しそうにしていた。
その時、目の前の薮がガサガサと大きな物音を立てる。
姿を表したそのポケモンに、私の目は釘付けになった。
[*prev] [next#]
TOP