01
街の喧騒が耳に響く夜、私……ハルは屋上から街を見下ろす。
この世界が嫌いだ。
私を取り巻く環境が嫌いだ。
"暖かい家庭"なんてまやかしだ。
"美しい友情"なんて絵空事だ。
あぁ、神様なんて存在が本当にいるなら……どうして私をこんな姿にしたのだろう。
(……)
もういっそのこと、自らの手で終わらせてしまおう。
"あの世がある"なんて信じてはいないし、あったとしても行けるかどうか分からないけれど。
"この世"という地獄で生きていくことに比べればマシだ。
("彼"にこそ、生きていて欲しかったのに……)
たった1人だけ心を許していた存在の顔が脳裏に浮かぶ。
(ゴメンね……。でも私、生きることに疲れちゃった……)
かつて彼に救われたこの命を捨てると知ったら、もちろん彼は怒るだろう。
でもそれ以上に、この世界で生きることが苦痛で仕方ないのだ。
(私も、もうすぐそっちに逝くから……)
彼の遺したペンダントを握り締めながら、私の体は重力に従って落ちていった。
[*prev] [next#]
TOP