03
結局、今日は各自が自分の好きなことをやって過ごした。
私と雅は他愛のない話に花を咲かせていたし、白刃は窓際で読書、蒼真と悠冬はジョーイさんからもらった塗り絵をやってた。
気が付いたら夜になり、テーブルには夕食が準備されていて。
いつものように全員でいただきますを言って夕食を食べ始めた時、白刃が何やら真剣な表情をしていることに気が付いた。
「白刃、難しい顔してどうしたの? 何か考え事?」
「恐れながら姫、以前から気になっていたことがあるのですが……」
「ん?」
「姫はいつから我々ポケモンの言葉を解するようになったのかと思いまして……」
「「……!」」
白刃の言葉に雅と蒼真、悠冬がハッとなり、私と緑炎はピシリと固まる。
『そういえば……』
『……』
「そうですわね……」
静寂に包まれた部屋の中で、4人の視線が一斉に集まるのを感じる。
ポケモンの言葉が分かる――。
トリップしてきた時に偶然身に付いた、不思議な能力。
話したくなかったわけじゃない。いつか聞かれたら答えようと思ってた。
「緑炎……」
「別にこいつらには話しても良いだろ。仲間なんだし」
そうだよね。この子達に隠す必要なんて全くないんだよな。
「いつからかは分からない。
気が付いたらポケモンの言葉が分かるようになってたんだ」
緑炎が"嘘つけ"的な目で見てくる。
本当に分からないんだから仕方ないじゃないか。
「では姫が我々の言葉を理解出来ることに、何か意味があるのでしょうか?
……い、いえ! 決して姫のことを悪く申し上げたいつもりでは!」
「大丈夫だよ白刃、気持ちは分かってるから。
意味かぁ。正直な話、この能力が身に付いた意味も理由も……憶えも無ければ見当も付かないんだよね。
気にはなるけど」
「……そういやぁフユカ、お前本当にテオさんって名前に憶えが無いのか?」
その名前って確か、前にコルニちゃんからも聞いたな。
「うん、あれからちょいちょい考えてはいるんだけど、全然心当たりが無いんだよね。
でも……どうしてかずっと引っかかってさ。初めて聞いた名前のはずなのに、どこか懐かしい気もしてる」
「……そうか」
「緑炎は、その"テオさん"という人物のことを何か知っているのか?」
「いや……」
どうしたんだろう。なんかいつもの緑炎じゃないみたい。
具合が悪いわけじゃ無さそうだけど、どうにも返答の歯切れが悪い。
余計な詮索はしない方が良い……のかな。
外の空気を吸ってくる、と言って緑炎が部屋を出る。
その時の彼の瞳に、悲し気な色が映っていた意味を……この時の私は知らなかった。
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