01
「はぁ〜、着いた! コボクタウン!」
緑炎に叩き起されて朝食を食べ、研究所を出発した私たち。
そして今、コボクタウンの地を歩いている。
この街に来た目的はもちろん……。
「さぁ緑炎、雅! 今日はこのままショボンヌ城とパルファム宮殿に行くよ!」
いわゆる、歴史巡りだ。
巡るほどではないけどね。
「……で、ショボンヌ城に来てみたは良いんだけど」
何もない……。
びっくりするほど何もない。
大きな期待を抱いていただけに、落胆は大きかった。
「どうすんだ? これ以上見て回っても収穫は無さそうだぞ」
「そうだなぁ。私はこことパルファム宮殿を見学したら気は済むんだけど。
2人はどこか行きたいところとかある?」
「俺は夕飯の買い出しくらいだな。雅は?」
「私はお2方にお任せしますわ。
フユカ様がパルファム宮殿に行きたいとおっしゃるなら、私も参ります」
前から気になってたんだけど、何故か雅は私たちのことを"様"付けで呼ぶ。
悪い気はしないけど……何かねぇ?
「ねぇ雅。その呼び方、どうにかならない?
別に"様"なんて付けなくても良いんだよ。私にも緑炎にもさ」
「ですがお2方は私の恩人ですし……失礼があっては」
雅の言葉に私は軽くため息をつく。
当の本人は困惑したように首を傾げるだけだ。
「あのね雅、よく聞いて。
私は君に恩人だと思って欲しくて一緒にいるんじゃない。
"仲間"だと思っているからこそ、私も緑炎も一緒にいるんだよ。
口調まで変えろとは言わないけどさ、せめて様付けは止めてほしいな。
雅はもう私たちの仲間なんだから」
「……ありがとうございます。これからはそうしますわ。
改めてよろしくお願いしますね、フユカ、緑炎」
そう言ってはにかんだ雅に、私も緑炎も微笑んだ。
[*prev] [next#]
TOP