05
私たちの間に沈黙が流れる。
なかなか言葉が出なかった。
私の返答次第で、何がどう転ぶのか全く見えないから。
良い方向に進むのならまだしも、悪い方向に進んでしまったら……。
そう思ったら次の言葉を紡ぐことが出来なかった。
「フラダリさん、彼女はまだ旅を始めたばかりです。
そのような話は少し難しいんじゃないかな?」
「……そうですね。すみません、フユカさん。
今の話は忘れてください」
「いえ……確かに私には難しい話ですけど、これだけは言えます。
人間同士の絆、人間とポケモンの絆はとても美しいものだと……そう思います」
視線をフラダリさんから自分のモンスターボールベルトに移す。
そこには6つのモンスターボール。そのうちの2つにはすでに仲間が入っている。
「この子たちとも今までに旅先で出会った人たちとも、不思議な縁があったから出会えたと思うんです。
もちろん博士やあなたとも。私はその繋がりを壊したくない。
もしそれらを壊そうとする者が現れたのなら、私は戦います。
大切な人たちが危険な目に遭えば全力で守ります。
……これが、今の私の答えです」
再び私たちの間に沈黙が流れる。
3人が一様に真剣な顔で黙っている様子は、優雅なティータイムとは程遠い。
やがて、フラダリさんが"ふむ"と1つ頷いた。
「なるほど。そういう考え方もあるのですね」
彼は席を立つと、厨房から何かを持ってきた。
"どうぞ、召し上がってください"と目の前に置かれたそれは、ガトーショコラだった。
「私からのサービスです」
「え、そんな、悪いですよ。ちゃんとお金払います」
「お気になさらず。私も貴重な意見を聞かせていただきましたから、そのお礼です」
「……じゃあ、いただきます」
1口食べたガトーショコラは、私のモヤモヤした感情を写し取ったように苦かった。
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