04

翌朝−−。

ゴジカさんとニャオニクスにお礼の挨拶をして、滞在していたポケモンセンターに戻ってきた。

部屋に入ってみんなと目が合った瞬間、涙で顔をグシャグシャにした悠冬にタックルレベルのハグを食らって今に至る。

「フユカ! もう大丈夫なの!?
もう苦しくない!?」

「う、うん。もう大丈夫だよ。
……あの、悠冬そろそろ離して。首が締まって苦し……っ」

蒼真がやんわりと悠冬を宥めて引き離してくれる。

進化して喋り方も大人っぽくなった悠冬だけど、パニックになったり感情が飽和したりすると幼い口調に戻っちゃうみたい。

「ところで、私ってどのくらい寝てたの?」

「丸3日だよ……」

「えっ、そんなに!?」

やっぱり寝てる時って、数日過ぎてても分からないものなのかな?

まだ1日しか経ってないと思ってた……。

「ゴジカさんから、いつ起きるかはフユカちゃん次第だって言われててさ。
"待つことしかできない"ってことが、こんなにもどかしいなんて知らなかったよ」

「フユカがいない間、何をやっていても身が入らず……。目を覚ましてくれて、本当に良かったですわ」

「みんなごめんね、心配かけちゃって。で、白刃は顔を覆ってどうしたの」

「あー、気にしなくて良いよ。
フユカちゃんが戻ってきて、涙腺緩みまくってるだけだから。放っとけば落ち着くって」



白刃の目の腫れが収まるのを待って、私は幼少期の記憶が全部戻ったことを話した。

「そっか。フユカちゃんはあの屋敷の令嬢で、プラターヌ博士の姪っ子だったんだね」

「んー……"令嬢"なんてガラじゃないんだけどね」

「フユカは……いえ、シャルロットとお呼びするのが良いでしょうか?」

「私はどっちでも良いよ。
シャルロットでもフユカでも、私であることは変わらないからね。好きな方で呼んで」

ワイワイ、ガヤガヤ。

みんなと過ごすこの時間を楽しいと思ってるし、ずっと続けば良いと思ってる。

(でも……)

この尊い時間が終わりに向かおうとしているという現実が、目の前まで迫っている感覚がしていた。

フユカでいた時の私だったら、他人事のようにすることもできただろう。

でもシャルロットとしての記憶を取り戻した今、この状況を看過できない。してはならない。

私はどうしようもない程レオンハルト家の血を引いていて、"一族の宿命"からは逃げられないのだ。



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