05
「博士。話があるんだが、良いか?」
「君は……!」
博士は俺を部屋に通し、コーヒーを入れてくれた。
「君の話を聞く前に、1つ確認させて欲しい。……本当に"あの子"なんだね?」
博士の顔はいつにもまして真剣だ。
心配じゃないはずがない。
「あくまで"可能性がある"ってだけだけどな。
10年も経ったから大人びてるが、アイツの面影はある」
「そうか。それでも、無事で良かった……」
顔を覆い、溜め込んでいた空気を吐き出すように、博士は安堵の言葉を紡ぐ。
その声は微かに震えていた。
それほどアイツを大切に思っているのだろう。
「君に頼みがある。
本当にあの子じゃなかったとしても、彼女を守ってほしいんだ。
無事に、この研究所へ戻って来られるように……。
あの子の父親のような悲劇に会わせたくないんだよ」
博士の気持ちは痛いほど分かった。
俺はその現場に居合わせたわけじゃないが、その悲劇は話に聞いている。
あんなことをアイツにさせたくないのは俺だって同じだ。
「分かってる。
俺の命に代えても、守ってみせる……!」
「ダメだよ。君も一緒に帰って来るんだ。
そうじゃないとあの子が悲しむだろう?」
「……フッ。そうだな」
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